遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
卵子提供者は母に非ず
最高裁判所平成19.3.23判決は、夫の精子と妻の卵子を用いた生殖補助医療により、米国在住の米国人女性が懐胎し出産した子について、「現行民法の解釈としては、出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず、その子を懐胎、出産していない女性との間には、その女性が卵子を提供した場合であっても、母子関係の成立を認めることはできない」と判示し、出生届の受理を命じた二審の決定を破棄し、出生届けを受理しない扱いを是認しました。
精子提供者は父に非ず
最高裁判所平成18.9.4判決は、すでに亡くなった人の凍結保存精子を用いた体外受精により出生した子が、検察官に対し、その子が精子提供者の子であるとして死後認知を求めた事件で、「死後懐胎子と死亡した父のとの間の法律上の親子関係の形成に関する問題は、本来的には、死亡した者の保存精子を用いる人工生殖に関する生命倫理、生まれてくる子の福祉、親子関係や親族関係を形成させることになる関係者の意識、更には、これらに関する社会一般の考え方等多角的な観点からの検討を行った上、親子関係を認めるか否か、認めるとした場合の要件や効果を定める立法によって解決されるべき問題である・・・そのような立法がない以上、死後懐胎子と死亡した父との間の法律上の親子関係の形成は認められない」と判示しました。