自治体がする契約 14 単年度主義と長期継続契約
自治体の首長(都道府県知事や市町村長)のする補助金の支給には、最高裁判所は、三権分立の見地からか、遠慮がちであるように思えます。
1 名古屋デザイン博事件(平成16.7.13判決)
「市と1審被告協会との関係の実質等を確定せずに本件各契約の締結について裁量権の逸脱、濫用があったものと判断した原判決の判断には法令違反がある」として、原審(二審)の判決を破棄し、一部につき差し戻し、一部につき請求を棄却し、
2 陣屋の村事件(平成17.10.28判決)
「当該団体は町から委託を受けて管理運営に当っているのであるから、その運営によって生じた赤字を補填するために補助金を交付することは公益上の必要があるとした町の判断は一般的には不合理なものではなく、本件雇用によって赤字が増加したからといって、補助金の交付が特に不合理な措置ということはできない」として、補助金に係る支出を違法とした原判決を破棄し、請求を棄却し、
3 関釜フェリー事件(平成17.11.10判決)
「市議会において特にその支出の当否が審議された上で可決されたこと、・・右補助金を支出したことにつき公益上の必要があると判断したことは、その裁量権を逸脱し、又は濫用したものと断ずべき程度に不合理なものということはできない」として、原判決を破棄差し、請求を棄却したのです。
4 支援金事件(平成22.2.23判決)
これは昨日の「コラム10」で紹介しましたが、これも一審と二審は、補助金は違法だとしたのを、審理をやり直せと命じたものです。
5 最高裁判所の考え
関釜フェリー事件は、補助金を受け取った第三セクターの代表者が自治体の首長(市長)であること等から、この判決には強い反対があります。また同事件を扱った裁判官の中から反対意見も表明されていますが、このような批判の強い第三セクターへの補助金でも違法ではないと判示した最高裁判所の見解の底にあるのは、判決理由にも触れられているように、議会の議決を得た結果の補助金の支給であることではないか、と思えます。
つまり、最高裁判所すなわち司法が、議会の判断を尊重しているということかも知れません。
しかしながら、議会が常に住民にとって公平な議決をするとは限らず、市長と馴れ合いで公金を濫用的に使うこともあり得るのだから、司法は、もっと行政をチェックすべきであるとの意見が、「補助金」に関しては、強いように思えます。