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行政 8 議員さんには甘いの?

菊池捷男

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テーマ:地方行政


昨日のコラム「行政 7」で、地方公共団体の非常勤職員である、県の収用委員会や労働委員会の委員や会長への月額報酬は違法であると判示した大阪高裁の判決を紹介しましたが、本日は、地方議員への報酬の二重取りだとの批判の強い定額制「費用弁償」を定めた条例は違法ではない、との判断を下した最高裁判所の判決を紹介します。

これは、地方自治法203条1項で「普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、議員報酬を支給しなければならない。」という規定と、同条2項で「普通地方公共団体の議会の議員は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。」という規定を置いていることから、市会議員に「議員報酬」の外に日額10、000円の「費用弁償」を支給していた札幌市の条例のうちの、費用弁償について、その金額が高すぎるとして、住民から、札幌市長に対し損害賠償の請求をした事件です。

一審の札幌地方裁判所は、費用弁償の事由とその額の決定については、議会の裁量判断に委ねられているとの理由で、住民からの請求を棄却しました。
二審の札幌高等裁判所は、札幌市が支給している費用弁償の額は、必要と認められる費用額の3倍程度の日額が一律に支給されたものであるから、違法である、と判示し、住民からの請求を認めました。
最高裁判所平成22.3.30判決は、会議の重要性、諸費用の弁償の定め方などの本件の諸事情を考慮すると、本件条例の定めは、地方自治法203条が普通地方公共団体の議会に与えた裁量権の範囲を超えまたはそれを濫用したものとして違法、無効となると断ずることはできないとし、東京高裁の判決を破棄し、住民の控訴を棄却しました。

なお、この費用弁償につきましては、議員の報酬の二重取り、との批判が強く、札幌市もその後この制度を廃止し、政令指定都市の多くも廃止したようです。
なお、この2つの支給はいずれも地方自治法に根拠があるのですから、費用弁償のうち「実費相当額」については「二重取り」との批判は酷かもわかりません。

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菊池捷男(弁護士)

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