地方行政 臨時職員と労働契約法18条による無期転換請求権
滋賀県での例です。
滋賀県では、県の労働委員会、収用委員会、選挙管理員会の委員へ、条例で、月額報酬を支給していました。その金額は委員長・会長で月額226、000円、委員で202,000円と191、000円ですが、この月額報酬制は、係争事件がなく一度も出勤しなくても満額もらえるという報酬制であります。実は、この月額報酬制は、多くの自治体で採用されているのです。
この月額報酬制に強い反省を求めたのが次の判決で、多くの自治体が衝撃を受けたとされています。
大阪高裁平成22.4.27判決は、上記3委員会のうち、選挙管理委員会委員については月額報酬は合法、他の委員会委員への月額報酬は違法と判示し、後者について公金の支出を差し止めました。
ところで、地方自治法203条の2は、「前項の職員(注:行政委員など)に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。」と規定しており、非常勤の行政委員の報酬は、勤務した日の日当のみが原則ですが、「条例で特別な定めをした場合」は月額報酬制にすることもできることになっています。
滋賀県の場合も、この「ただし書き」によって、条例を作り、上記委員への報酬を月額制にしたのですから、問題はなさそうに見えます。
しかしながら、実は、裁判例、学説とも、条例さえあれば月額報酬が合法になる、とは考えていません。
大阪高裁判決は、「ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。」という言葉の中には書かれていないが、①非常勤職員の役所における勤務量が常勤の職員に比肩しうるあるいは準ずる場合、②役所における勤務量が必ずしも多くない場合でも、役所外の職務執行や、役所の内外での勤務に備えての待機が多いなど事実上の拘束があって、月額で報酬を支払うのが相当と考えられる場合など「特別な事情がある場合」に限って、「条例で特別な定め」つまり月額報酬制にできるのであって、そうでない場合には「勤務日数に応じて」支給しなければならない、と判示しております。
この判決は、現在の地方公共団体は、財政難に直面し、適正、公正、透明で、説明可能な行政運営が強く求められているのだから、自治体は、地方自治法2条14項や地方財政法4条を強く意識すべきことも強調していました。
このような見解が出されるのは、その前提として、非常勤行政委員に月額報酬を支払えば高くなる、日当制にすれば安くなる現実がある、ということです。実は私(菊池)も月額報酬制の行政委員・会長、日当制の行政委員・委員長のいずれも務めた経験がありますが、実感として、両者の差は、安いか高いかは別として、かなり大きいものがある、と思います。
参照:
・地方自治法2条14項
地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。
地方財政法4条
地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。