地方行政 臨時職員と労働契約法18条による無期転換請求権
行政訴訟が変わりました。
これは改正行政事件訴訟法が施行された平成17.4.1以降の顕著な現象です。
まず、原告適格、つまり、行政処分の取り消しを求める原告になる資格、のことですが、これが大幅に拡大しました。
1 騒音被害者にも原告適格
最高裁判所は、平成17.12.7に、小田急高架事業が実施されることにより「騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者」に、当該事業の認可の取消を求める原告適格を認めました。
二審の東京高裁は、「事業地に不動産上の権利を有する者」にしか原告適格を認めていなかったのですが、最高裁は、広く、「健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者」にまで原告適格を拡げたのです。
これは、前述のように、行政事件訴訟法の改正の影響です。
それまで、原告適格は、行政事件訴訟法9条1項で、「取消訴訟は、取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。」と定めていただけでしたが、改正法で2項が設けられ、それには、法律上の利益の有無を判断する基準として、①法令の規定の文言、②当該法令の趣旨・目的・利益の内容及び性質を考慮、③関係法令の趣旨・目的をも参酌、④害されることとなる利益の内容・性質・害される態様・程度をも勘案して、判断すべきものとの規定が置かれ、これにより、原告適格が拡大したのです。
2 市町村道の廃止処分の抗告訴訟での原告適格の拡大
なお、抗告訴訟とは、無効確認や取消など、行政処分の効力を争う訴訟形態を言います。
従来の考え方は、最高裁判所昭和62.11.24判決に代表される考えですが、この事件は、一般公衆が道路を自由に通行することができる利益は、道路があるということの反射的利益にすぎず、法的に保護された利益ではない。だから、里道の近くに居住する者が当該里道の用途廃止処分の取消しを求める原告適格はない、とされたのです。
が、改正行政事件訴訟法の施行日以後となる平成8.1.27、
福岡高等裁判所宮崎支部判決は、旧市道の路線廃止処分によって、そこを通ってホテルに来てくれている顧客がその市道を通行できなくなるホテル経営会社には、路線廃止処分の無効確認を求める法律上の利益があるとして、原告適格を認めました。
この判決も、無論、原告適格認定には、行政事件訴訟法9条2項を根拠にしています。
参照
行政事件訴訟法
(原告適格)
第9条処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
(平一六法八四・一部改正)