コラム
相続 1 相続の意味
2010年9月5日
このコラムで、暫くの間、相続について書いてみます。
「相続」とは、「自然人の法律上の地位を、その者の死後に、相続人と称する特定の者に包括的に承継させること」であると定義されています。
ここで「自然人」とは「人」のことです。
法が特別に人格を与えた「法人」に対応する言葉です。
人は、法に拠らず、「人」であることから当然権利義務の帰属主体になります(自然法思想)が、法人は法によって権利義務の帰属主体になるのです。
またここで「法律上の地位」とは財産上の地位を言いますので、権利・義務と同じことになるのです。
すなわち、「相続」とは、「人が亡くなったとき、その権利・義務を特定の者が包括的に承継すること」と言っても良いのです。
なお「包括的に」という言葉ですが、これは「そのままそっくり」と言う意味になります。
「包括的に承継する」すなわち「包括承継」とこれに対応する「特定承継」の違いを、包括承継の代表格である「相続」と「特定承継」の代表格である「売買」とを比べて説明しますと、例えば、市街化調整区域における農地を「売買」で取得する場合は、農地法3条で定める要件である「農業委員会」の許可が必要になりますが、「相続」で取得する場合は、「そのままそっくり」相続できますので、農業委員会の許可がなくとも取得できるのです。
包括承継には、このような有利な面がありますが、一方、被相続人の義務的な面も当然引き受けざるを得ません。例えば、被相続人が、生前不動産を売っていたとします。相続は、その売主の地位を「包括的に」承継していますので、その不動産に瑕疵があれば、当然、その担保責任を追求される立場に立つのです。
つまり「相続」の場合、「親父(被相続人)のしたことや言ったことについては、子(相続人)に責任はない」とは言えない関係になるのです。これが「包括承継」の意味なのです。
余談ですが、「包括承継」には「相続」の他には会社などの「合併」があります。
以上が、法的意味における「相続」の意味ですが、実は相続には、他にも大きな意味があります。
それは、相続は、過去の「人間のドラマ」を蘇らせ、新たな「人間のドラマ」をつくり、将来の「人間のドラマ」を準備する契機になるものという意味です。
参照:
民法896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
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