遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1,大会社と委員会設置会社には内部統制を構築する義務があります
資本金5億円以上または負債200億円以上の株式会社は「大会社」と呼ばれますが、大会社で取締役会のある会社は、取締役会で、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」に関する事項を決定する義務があります(会社法362条6項。委員会設置会社の場合は会社法416条)。
この規定を受けて法務省令である同法施行規則100条では、
「業務の適正を確保するための体制」として
1 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
2 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
3 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
4 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
5 当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
が定められています。
2,実は、この内部統制の構築は、それ以外の会社にも必要なことなのです。
内部統制は、①業務の有効性と効率性、②財務報告の信頼性、③法令等の遵守、④資産の保全という4つの目的を達成するための保証を得るために業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、ⅰ統制環境、ⅱリスクの評価と対応、ⅲ統制活動、ⅳ情報と伝達、ⅴモニタリング(監視活動)及び、ⅵIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成されるもの、とされています。
ⅰの「統制環境」とは、経営基盤のことです。経営者の意向や姿勢、倫理観や経営哲学などの人的な資質や、取締役会や監査役が機能していること、組織・構造やそこに付与される権限や責任が適切であることなど組織のあり方、人的資源の使い方などが問われます。
ⅱの「リスクの評価と対応」は、リスク(組織目標の達成を阻害する要因)を把握し、分類し、分析と評価をなし、対応(回避・低減・移転・受容)を決するのです。
ⅲの「統制活動」とは、リスクの評価と対応を受けて組織を見直し、人員の配置換え、職務規程の制定などを通して実施していくことです。
ⅳの「情報と伝達」は、多くの情報の中から真実かつ公正な情報を特定・識別し、必要な情報は情報システムに取り入れ、分類、整理、選択。演算など目的に応じて加工などの処理をなし、組織内、組織外に、あらかじめ定めている経路を経て伝達することです。ここでは、通常の伝達ではないが、情報と伝達とモニタリングの仕組みの1つとして内部通報制度(通報者保護制度とセット)が重要になる場合もあるでしょう。
ⅴの「モニタリング」は、内部統制を常に監視、評価、是正するプロセスです。
ⅵの「ITへの対応」は、情報の収集と処理の有効性と効率性を高めるための利用と機密の漏洩防止などですが、第三者への委託契約の管理なども含みます。
このようなシステムの構築はすべての会社に必要なことだと思います。
なお、会社法とは別に、金融商品取引法(日本版SOX法)は、すべての上場会社に、財務に関する分野における一定の内部統制措置を講ずる義務を課しており、内部統制の重要性が広く認識されています。