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加藤俊光

おひとりさま・おふたりさまの様々な悩みに寄り添う行政書士

加藤俊光(かとうとしみつ) / 行政書士

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

コラム

節税重視の対応が招いた相続トラブル事例(1) ~税理士によって引き起こされた争続の悲劇 ~

2011年10月18日 公開 / 2018年9月22日更新

テーマ:円満解決の極意【相続相談の現場から】

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

 今月も無事に『相続・遺言に関する無料相談会』を終えることができました。気持ちのいい秋晴れの日曜日で様々なところで魅力的な催しがあったにもかかわらず、ご予約いただいた皆様においでいただいたことにお礼申し上げます。

 多くの方のご相談を対応させていただいて感じていることは、やはりどうしても相続税に関心をお持ちになられる方が非常に多いということです。

 『亡くなった父は郊外に少し広めの土地(約120坪)を持っていたのですが、相続対策を考えて配偶者や子供たちとその配偶者の合計8名で共有名義の登記をしました。その父は12年前に亡くなってしまいましたが、いまだに相続人同士で話し合いがつかずに困っています、どうしたら解決できるでしょうか』とご相談にお見えになった60代の女性がいました。複雑に絡み合った感情をむき出しにした人間関係やこれまでのご苦労をお聞きし、さらに解決までの膨大な労力や時間を考えると私はこの方々が気の毒でなりませんでした。いくつかの解決策をご提案させていただきましたが、ご参考となり一日も早く解決されることを願わずにはいられませんでした。

 確かに、世論調査などの結果を見ても復興財源をめぐっては増税もやむなしという風潮があり、また大増税時代の到来を謳う新聞広告などを目にすれば、一般の方が不安を覚えるのも無理からぬことでしょう。

 しかし、相続税の課税を強化する法案は噂ばかりが先行しており実際のところは法案成立のめどすら立っていないのが現実なのです。

 思うに、もしも一般的なサラリーマン世帯にまで相続税が課税されるようになったとしても、納税しなければならない金額はせいぜい数十万円がいいところではないでしょうか。

 とすれば、相続税を支払えずに土地・建物を処分しなければならないような事態などはほとんどあり得ず、何億ないし何十億も資産をお持ちの方ならばともかく一般の方がアパートやワンルームマンションあるいはその他の金融商品に投資をしてまで相続税対策をする必要などはないと断言できます。

 むしろ、これから相続対策をお考えの方がいらっしゃいましたら、相続税が払えるかどうかよりも誰が何を相続するかの話し合い、いわゆる遺産分割協議において相続人同士がトラブルになってしまうことにもっと多くの対策を施していただきたいと考えています。

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 なぜなら、遺言がなければ法定相続が原則であり、結局は相続人同士で誰が何を相続するか話し合わなければなりません。とはいえ、長引く不況や権利意識の向上で、長男がすべて相続するのが当たり前という家督相続的な考え方では大半の相続人全員が話し合いのテーブルにすらついてくれないでしょう。だからと言って、法定相続分が決まっているとはいえ土地や建物はケーキやヨウカンなどのように包丁で切って分けることなどできるはずもありません。法律論だけに頼っても、結局当事者はいがみ合うだけで永遠に解決にはたどり着けないのです。

 世の中には、相続・遺言の業務に携わっている専門職は数多くいます。しかし、残念ながら『法律論だけですべてを解決しようとする』、『節税対策を重視するあまり人間関係への配慮が足りない』といった対応が多いのも事実です。

 これからの時代求められることは、まず第一に起こりうるであろう紛争を的確に把握して適切な予防策を講じることでしょう。そして、第二に万一紛争が起こってしまった場合でも、当事者の話し合いで速やかに円満に解決できるような方策を助言していくことであり、そのためには私自身がすべての当事者から信頼される調整力・人間力をもっと高めていかなければならないと感じました。

 これからも私は、ひとりでも多くの方に『争わないための遺言書』をご提案し続けていきます。
 

この記事を書いたプロ

加藤俊光

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加藤俊光(相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所)

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