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太田英之(おおたひでゆき) / 司法書士

クローバー司法書士事務所

コラム

資産として保有されるケースも増えてきた株式の相続手順

2019年11月18日

テーマ:相続

コラムカテゴリ:法律関連

株式投資はずいぶん身近になってきました。配当や株主優待を目的に、また老後などを見すえて株式投資などを行う人が増えてきています。

そうした株式も相続発生の際に対象となります。しかし、株式は預貯金と異なり、法定相続分に応じて分割はできず、別途遺産分割の協議が必要となります。そこで今回は、株式の相続についてお伝えいたします。

株式の相続の手順

株式を相続するにはおおよそ次の手順になります。

1:遺言書の有無と内容確認
2:相続人の調査
3:株式を含めた相続財産の調査
4:相続承認か放棄かの決定
5:準確定申告
6:相続人が複数人いる場合は、遺産分割協議
7:名義書き換え
8:相続税がかかる場合は、相続税の申告と納付

では、それぞれについて説明をしていきます。

【1:遺言書の有無と内容確認】
遺言書があれば、相続は基本的に遺言書にそって行われます。これは株式も同じですので、遺言書の有無を確認し、遺言書があった場合は内容を確認します。

【2:相続人の調査】
遺言書がなければ、法定相続人が遺産を相続します。そのため、相続人の調査が必要です。これは、相続の際に被相続人が認知した子がいるケースもあるため、被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を収集して行い、相続人の範囲を確定させます。

【3:相続財産の調査】
株式だけに限らず、相続財産をすべて把握しなければなりません。そして、株式の調査ですが、こちらについては後述します。

【4:相続承認か放棄かの決定】
相続人が相続をするか放棄するかを決定します。負債が上回っている場合などは、その負債も相続するので、その場合は放棄を選択する人が多くなる傾向があります。

【5:準確定申告】
被相続人の分の確定申告を、相続人が行います。これを準確定申告といいます。被相続人が亡くなった年に配当金があったり、取引で譲渡益が生じている可能性もあります。
また、土地取引などや個人事業を営んでいる場合など、被相続人の死亡した年に所得がある場合は、準確定申告を行う必要があります。

【6:相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行う】
預貯金などは法定相続分と決まっても、株式については相続人の間で協議しなければなりません。これは、株式は名義書き換えが必要だからです。そのため、誰がどの株式を相続するかを決める必要があります。

【7:株式の名義書き換えを行う】
協議がまとまったら、株式の名義書き換えを行います。上場企業の場合は、証券会社や信託銀行に、非上場企業の場合は株式発行会社に届け出て名義書き換えを行います。
必要書類についてはケースによって異なるので、証券会社や信託銀行などに問い合わせてください。

【8:相続税がかかる場合は、相続税の申告と納付を行う】
こちらについても、別の章でお伝えします。

株式の相続は、このような手順で行われます。
では、後述すると記した2点についてお伝えしていきましょう。

株式の調査方法

先の流れでいえば、相続財産の調査に際に株式もその対象に当然含まれます。そして、株式の調査ですが、上場か非上場化で方法が異なります。

【上場企業の株式の場合】
上場企業の場合は、証券会社を通じて取引をするので、取引口座開設の際の控えや取引報告書、取引残高報告書などを手掛かりに調査します。

インターネット取引も考えられるので、メールや閲覧履歴などから調査しましょう。取引している証券会社がわかれば、そこから株式の保有状況がわかります。株券の発行会社がわかっていれば、株主名簿管理人になっている信託銀行がわかるので、そこから調査する方法もあります。

【非上場企業の株式の場合】
非上場企業の株式は、新株の割り当てを受けるか、株主から直接譲渡されるくらいしか取得方法がありません。被相続人とのコネクションによってしか入手できないので、例えば被相続人が役員をしていたとか、社長や取締役と親しくしていたというならば、その会社に株式保有の有無を確認してください。
また、非上場企業の場合、株式譲渡に制限がかかっている場合も多いので、会社側から売渡請求が来る場合もあります。

このように、株式が上場か非上場かによって調査方法が異なります。面倒ではありますが、後々になってもめないためにも大事な調査ですので、ぜひ行ってください。

相続税がかかる場合について

相続の際に、基礎控除額を超える相続財産がある場合、相続税がかかります。

相続税の基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」になります。法定相続人が2人の場合は4200万円です。この中には株式も入りますが、この評価の方法が上場企業か非上場企業かによって分かれます。

【上場企業の株式の場合】
上場企業の株式の評価は、次の4つの時点の終値で、最も低い日の株価で評価を行います。

(1)相続開始日(通常は被相続人の死亡日)の終値
(2)相続開始日の当月のすべての営業日の終値の平均
(3)相続開始日の前月のすべての営業日の終値の平均
(4)相続開始日の前々月のすべての営業日の終値の平均

これらの終値は、取引を行っていた証券会社の発行する残高証明書で確認できます。


【非上場企業の場合】
非上場企業の場合は、経営権を有していたか、経営権を有していた場合、会社の規模はどうかによって異なります。

経営権を有していた会社が大会社の場合は、事業内容が類似の複数の上場企業の株価の平均値などを参考に計算されます。

小会社の場合は、相続開始日に会社を清算したと仮定して、株主一人当たりの分配額で計算されます。中会社の場合は、大会社と小会社の計算方法の折衷で行われます。

経営権を有しない場合は、次の計算式が当てはめられます。
(年間配当額/10%)×(1株あたりの資本金等の額/50円)

ただ実際のケースとしては、どの基準で判断するかなど難しいですし、各方式による具体的な計算額については、税理士などの専門家に相談しましょう。


相続の際に重要な資産になる株式ですが、実際に相続の対象となるとさまざまな手続きが必要となります。
個人で株式投資を行う人が増えていますので、他人事とは考えずに、家族の株式投資の有無など常日頃から知っておくとよいでしょう。

この記事を書いたプロ

太田英之

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太田英之(クローバー司法書士事務所)

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