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太田英之(おおたひでゆき) / 司法書士

クローバー司法書士事務所

コラム

遺産を誰がどれだけ相続する?法定相続人の優先順位とは

2019年11月27日

テーマ:相続

コラムカテゴリ:法律関連

「莫大な財産を残し亡くなった財閥の当主。その財産を巡って、妻とその子供たち、さらには愛人とその子供がいくらもらうのかで争う」といった財産争いをテーマにしたミステリー作品は少なくありません。
こういったストーリーでは誰がいくら遺産を引き継ぐのか、その人物に遺産相続をする資格があるのかが争点になるわけですが、実際の相続でもこういった点が争いになります。今回のコラムでは、誰が遺産を継ぐのか、その資格があるのかという点についてお話しします。

法定相続人とは

相続においては、法定相続人といって民法で定められた相続人がいます。その範囲は、被相続人の配偶者とその血族に限られます。具体的には、配偶者と子供、親、兄弟姉妹とその代襲相続人に限られます。

また、この血族についても、全ての血族が相続人になるわけではありません。相続人に関しても優先順位があります。例えば、配偶者と子が健在あれば、兄弟姉妹は相続人になれません。
それでは、この優先順位を考慮に入れつつ、法定相続人の要件をそれぞれ見ていきましょう。

【配偶者】
配偶者は必ず相続人になれます。ただし、この配偶者は、戸籍上の関係が重視されます。いわゆる内縁関係であった場合は、相続人にはなれません。逆に別居であっても婚姻関係が継続していれば、相続人になれます。

【子】
子供は、血族としては第1順位にあたります。配偶者がいれば、配偶者が2分の1 子が2分の1(この分を子供の数で割る)をそれぞれ受け継ぎます。
そして、子の要件ですが戸籍上の子が該当します。そのため、愛人との間に子がいる場合は、被相続人が認知しているかどうかが重要になります。また、子が先に亡くなり孫がいる場合は、子の相続人の立場を孫が受け継ぎます。これを代襲相続といいます。

【親】
被相続人に子や孫がなく、親が健在であれば親が相続人になります。親は第2順位に該当します。
法定相続分は、配偶者がいる場合は配偶者が3分の2 親が3分の1(両親が健在ならば、この分を2で割る)になります。配偶者がいなければ、親が全額を相続します。
ちなみに、このケースで親がともに死亡していて、祖父母が健在ならば、祖父母が親の分を相続します。

【兄弟姉妹】
被相続人に子、孫、父母、祖父母がすべていない場合には、兄弟姉妹が相続することになります。兄弟姉妹は、第3順位ということになります。
法定相続分は、配偶者がいる場合は配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1(この分を兄弟姉妹の人数で頭割り)になります。
兄弟姉妹が亡くなっていて、その子(被相続人からしたら甥・姪)がいれば、甥・姪が代襲相続をします。

以上が法定相続人の範囲になります。

相続人になれないケースとは

では、法定相続人ならば必ず相続できるかというと実はそうではありません。法定相続人がその資格を失う場合もあるのです。それが、相続欠格と相続廃除です。このどちらかに該当した場合は、相続人の地位を失うことになります。

【相続欠格】
<被相続人を殺害>
財産目当てに被相続人を殺害、あるいは殺害しようとした法定相続人は相続できません。例えば、子供の一人が被相続人である父と遺産について争い、父親を殺害してしまった場合。こういったケースでは、犯人である子は相続人の資格を失うことになります。
ただ、この殺害ないし殺害未遂は故意であることが要件です。交通事故などで結果として死なせてしまった故意でない場合は該当しません。

<遺言書への干渉>
相続では遺言書は被相続人の意思として最大限尊重されます。しかし、被相続人を脅迫して書かせた場合などは、この遺言書は無効になりますし、脅迫した人は、相続欠格に当たります。遺言書の破棄や偽造なども同様です。

【相続廃除】
被相続人がある相続人から侮辱や虐待を受けていた場合などは、被相続人の意思でその相続人を相続から廃除することができます。これを相続廃除と言います。
家庭裁判所に申立て、遺言書に相続廃除の意思を示すことを家裁が認めれば、該当する相続人を相続から廃除することができます。

遺産相続でもめないためにも遺言書の作成を

これまでは法定相続人についてお伝えしてきました。しかし、法定相続はあくまで民法の規定にそっての相続で、そこに被相続人の意思は反映されません。

しかし、実際には身内といっても仲が悪く財産を譲りたくない人がいたり、血縁関係になくても晩年にお世話になり、報いたい人がいるケースもあります。こうした意思を相続で反映させるためには、被相続人が遺言書を残しておく必要があります。

この遺言書は、法定相続に優先されますので、最期の意思表示として残しておくことをおすすめします。そして、遺言書では、相続相手を自由に選定することができます。そのため、本来は法定相続人になれない内縁関係の配偶者(妻・夫)や養子縁組していない再婚相手の子供などに財産を残すこともできます。

ただ、法定相続人には遺留分という一定の遺産を受け継ぐ権利を有するケースもありますので、100%被相続人の意思が反映されるわけではないのですが、財産の配分について遺言書は何よりも優先されます。
介護を担当してくれた子に少し多く相続させるなど、残された家族がもめないように遺言で配慮することもできるのです。

「うちには財産はないから子供たちはもめないだろう」と思っていても、感情のもつれからもめてしまうのが相続です。
遺産相続で大切な家族が争わないためにも、ぜひ遺言書を作成していただきたいと思います。

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