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太田英之(おおたひでゆき) / 司法書士

クローバー司法書士事務所

コラム

養子縁組で法定相続人の数を増やせば相続税の節税になる?

2019年12月11日

テーマ:相続

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続税相続対策

相続税対策のひとつとして、「養子縁組をして法定相続人を増やす」というものがあります。
「実の子でもないのに法定相続人になれるの?」という疑問を抱く方もいると思います。養子縁組と相続人、そして相続税などの節税に関して、基本的なことを解説していきましょう。

養子縁組をして法定相続人を増やすことで節税につなげる

養子縁組をして法的に認められれば、血のつながりの有る無しに関係なく、被相続人の子として法定相続人にすることができます。

相続税を計算する時には「法定相続人が何人いるのか?」がとても大きく影響します。養子縁組で法定相続人を増やせば、それだけ相続税の節税につながる、というわけです。

【基礎控除額を増やす】
相続税には基礎控除額が設定されています。基礎控除額とは、相続税が課されない金額のことで、遺産総額が基礎控除額より少なければ相続税は発生しません。

基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」の計算式で算出します。

これからすると、相続人が実子1人と養子1人の場合には、
「3000万円+(600万円×2人)=4200万円」となり、遺産総額が4200万円以下であれば相続税はかかりません。簡単に言うと、養子をひとり増やすことで600万円の節税になると言うことです。

また、被相続人の生命保険金や死亡退職金も、
「500万円×法定相続人の数=非課税限度額」となっているので、法定相続人の数を増やせば、こちらでも節税をすることができます。
ただしこの場合では、相続人以外が受け取った場合には対象外となります。

【養子の人数制限】
相続税法によって、養子の数の条件は以下のように決められています。

・実子がいる場合には養子は1人まで
・実子がいない場合には養子は2人まで

養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2つの制度がある

養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つの制度があります。そして、それぞれで相続の内容が異なる部分もあるので注意が必要です。

【普通養子縁組】
普通養子縁組は、ごく一般的な養子縁組のことです。「普通」と付いているのは、特別養子縁組と区別するためです。

普通養子縁組をするにはいくつかの条件がありますが、特に大切なのは養親、養子が共に「親子関係を構築する意思」があるということです。
普通養子縁組では実親(元の親)との関係が無くなるわけではありません。あくまでも縁組によって、養親の家系を保持することが目的なので、実親との親子関係は継続されます。

このことから、最低でも二重の親子関係を持つことになり、遺産相続の際には、両方の親(実親は両親、養親は養親になった人のみ)の相続人となります。ちなみに養子の戸籍には、養親と並んで、実親の名前も記載されます。

【特別養子縁組】
特別養子縁組とは、特別な状況においてのみ認められる縁組のことで、養子になるか否かの判断は家庭裁判所の審判によって決められます。
そして特別養子縁組の場合には、実親(元の親)との関係は完全に消滅します。

特別養子縁組は、認められるためのひとつの条件として「父母による養子となる者の監護が著しく困難または不適当であること、その他特別な事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるとき」と民法第817条にあります。
「実の親と同じ状態で育てたい場合」や、「子の福祉」という観点からあるのが特別養子縁組です。

特別養子縁組の主な条件として、

・家庭裁判所での審理にて成立する
・実親との関係消滅
・夫婦共同で養親になる(養子が一方の連れ子の場合には養親もひとりのみ)
・養親となる夫婦のどちらかが25歳以上、もう一方が20歳以上
・戸籍の記載は長男、長女など
・親は離婚できない
・養子の年齢は原則6歳未満
・実の親の相続権は消滅

と厳しい内容になっています。

特別養子縁組は「相続税対策といった視点だけの話ではない」と言っていいでしょう。

養子縁組による相続税対策のメリットとデメリット

最後に、養子縁組の節税に関するメリットとデメリットをまとめます。

【メリット】
<相続税の基礎控除額が増える>
養子ひとりにつき600万円の節税になる。

<生命保険・死亡退職金の非課税額が増える>
養子ひとりにつき500万円の節税になる(ただし相続人以外が受け取った場合には対象外)。

<超過累進税率の緩和>
相続税は超過累進税率なので、相続人が増えることでひとり当たりの相続分が減り、場合によっては税率も下がる。

<2世代先への相続財産の移転ができる>
孫を養子にすることで、養子に相続させた財産分を1世代飛ばせる。ただしデメリットとして相続税額は増える。

【デメリット】
<相続人同士の遺産分割が困難になる可能性>
養子縁組をすることで、他の相続人の相続分は減ることになるので、不満が出て遺産分割の話し合いが紛糾しやすい。

<相続税優遇制度が使えなくなる可能性>
相続税法で認められている相続税優遇制度には、相続税の申告期間までに遺産分割を終了させて申告書を提出することが条件のものがあり、話し合いが紛糾して期限を守れないと優遇制度が利用できない。

<孫を養子にすると「相続税の2割加算」の対象になる>
孫を養子にし、孫が遺産を相続した場合は、相続税の2割加算の制度(一親等の血族及び配偶者以外が相続した場合に相続税が加算される制度)が適用される。なお代襲相続の場合は、これに当てはまりません。

<不当な減税と見られてしまうと養子縁組が認められない>
第三者や遠い親戚などを養子縁組にする場合、合理的な理由がないと、養子を法定相続人に含められないケースもある。


養子縁組での節税は、以上が基本的な内容ですが、ケースによって細かいさまざまな決まりがあります。
細かく言えば普通養子縁組にも条件がありますし、ケースによってはメリット・デメリットの内容も変わってきます。
養子縁組を考えるのであれば、まずは司法書士などの専門家に相談しましょう。そして何より、他の相続人たちに十分に配慮し、了解を取っておくことが重要です。

この記事を書いたプロ

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