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コラム
聴き方の極意 ~確認し、承認を得る~
2023年1月19日
戦前戦中の日本の小学校というのは、授業終わりの15分前になると用務員さんがベルを鳴らしていました。先生はその音を合図に生徒に号令をかけ、その日の勉強内容について発表させていました。そこで、たとえ内容が間違っていても頭ごなしには叱りません。「なぜそう思ったのか」の意見を述べさせ、みんなでそれについて一緒に考えたりしていたそうです。昔の小学生たちは、本当に素直で自由な発想や意見を持っており、独創的でとても面白い考え方がたくさんありました。
たとえ間違った意見でも、一旦全員で分かち合い、共有した上で、正しい答えにたどり着くまで話し合う。それによってみんなの意思統一がはかれます。当時の日本ではそんな教育がなされていました。
戦後、GHQは、『この授業を奪わなければ、いつまた日本国民は気持ちを一つにして戦争を仕掛けてくるか分からない』と、この授業のやり方を恐れました。そしてアメリカは、日本に対してはそれまでの授業のやり方を変えさせ、逆に自国にはその授業のやり方を取り入れました。「問いかける」や「尋ねる」の意味を持つ「訊く」という漢字が昭和20年に授業から削除される背景にも、実はそのような思惑があったようです。
「きく」の定義を知っていますか?「きく」とは、相手の方のじょうほうやおもい、かんがえを、自分なりに受け止め理解することです。「じょうほう」も「おもい」も「かんがえ」も、いろんな意味が含まれているので全部ひらがなです。
「きく」は、聞いた瞬間に過去形の「きいた」に変わります。だから大事なのは「きいた」の定義のほうです。「きいた」とは、相手の方のじょうほうやおもい、かんがえを自分なりに受け止め理解し、それを相手の方に確認し、承認を得た状態です。
自分の人生を振り返って、この定義のように人の話を『きいた』ことはありますか?
この定義で肝心なのが「確認し、承認を得た」の部分です。確認をすべきは、話をした相手です。つまり、「あなたがおっしゃった内容はこういうことかなと私は受け止めたのですが、合っていますか」と相手に確認するということです。
それに対して相手が同意したら、それで「承認」を得られたことになります。そこまでやって初めて「きいた」の状態なのです。
世の中の争いごとや揉めごとは主に三つの要素から起こります。一つ目は『言った』『言ってない』、二つ目は『やった』『やってない』、三つ目が『聞いた』『聞いてない』です。だから、このそれぞれについて常に確認と承認を得るようにすれば、勘違いや思い込みから生まれる争いごとや揉めごとはなくなります。
「きく」の極意を知ることは、豊かな人生を送る上でとても重要なことなのです。
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