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コラム

【知財】【基礎】はじめての出願 特許になるまで(シリーズ第4回)

2021年7月4日

テーマ:知的財産

コラムカテゴリ:法律関連

 シリーズ第1回で記載しました下記質問及び注意点に対応するものになります。

質問2:特許権を取得・維持する費用は?

質問3:どのくらい(期間)で権利になりますか?

注意点1:拒絶理由通知はまだ「ダメ」ではないです

注意点3:審査請求・早期審査の検討はしましたか

注意点4:発明の公開タイミングはいつですか


解説サイトの紹介

特許権を得るまでには、技術的な完成である「発明(の完成)」からスタートし、
出願・審査・審判・裁判等といったプロセスを経て権利になります。
詳しいフローは下記URL等のサイトで詳しく解説されています。 

特許庁 初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~
https://www.jpo.go.jp/system/basic/patent/index.html
特許庁 知的財産権制度説明会 テキスト
https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/index.html
独立行政法人 工業所有権情報・研修館
https://www.inpit.go.jp/blob/archives/pdf/patent.pdf
日本弁理士会
https://www.jpaa.or.jp/intellectual-property/patent/

ここでは発生する可能性が高いフローを中心に説明します。(*厳密には下図以外のイベント・手続・フローも発生します。あくまで基本形としての参考にして下さい。)

発明~出願(STEP1~5)
弁理士に依頼して出願する場合には、技術が確立した後(STEP1)弁理士に発明を説明し、
特許書面の作成を待ちます(STEP4)。なお、弁理士に依頼しない場合はSTEP3が省略となります。
また、STEP2は職務発明の場合/知財部門がある組織構成の場合です。
STEP5まで行うと出願が完了し、一応は秘密である必要がなくなり、外部へ発表等が可能な状態となります。

審査(STEP7~8)
審査は特許庁の審査官によって行われます。審査官のアクションとして「拒絶理由通知」がされる場合が多いです。
なお、「拒絶理由通知」は必ず発生するものではなく、一気に特許査定(STEP7→STEP9A)となる場合があります。

審判/裁判(STEP11~)
審査は「査定」(特許査定と拒絶査定があります。)により一度終了になります。
拒絶査定、つまり、特許権を付与しませんという判断に対し、
審判・裁判と進んで行きます。
審査・審判・裁判のどこかで認められると、登録料の納付等の手続き(STEP10)を経て特許権が付与されます。

各プロセスは統計上、下図のような確率で発生します。

上記の表からして、ハッピーエンド/最短ルート/最も多いパターンは下図のようなルートになります。



注意点1:拒絶理由通知はまだ「ダメ」ではないです
よく勘違いされるのが多いのは「拒絶理由通知」=「特許権を全く認めない」と思ってしまう場合です。
上記の通り、「拒絶理由通知」(STEP7)に対し、中間処理(STEP8)を行うのが大多数です。
統計的には9割近くに拒絶理由通知が出されます。
また拒絶理由通知は「出願の一部」にでも「ダメ」な部分があれば出されます。
つまり、特許権を全体的には認められる場合でも、一部整えなければダメな部分があれば「拒絶理由通知」が出されます。
拒絶理由通知に応答するには期限が設定されます。この期限を経過してしまうと本当に「ダメ」=拒絶査定(STEP9B)となってしまいます。
そのため拒絶理由通知が来たら速やかに対応する必要があります。

なお、中間処理は弁理士によっては対応してもらえません。出願時によく聞いておくべき点の1つです。
また、多くの弁理士は「新規出願」とは「中間処理」は別業務にしている点にも注意が必要です。

注意点3:審査請求・早期審査の検討はしましたか
上図の通り、出願しても(STEP5)審査請求(STEP6)の手続きをしないと審査には移行しません。
審査請求が可能な期限は原則3年です(例外はあります)。そして審査請求をしなければ特許権は付与されません。
単に出願しただけでは「審査請求しない」状態にあります。
ここは出願人から代理人に積極的にすぐに権利化させたい等の意思を見せないと代理人は分かりません。
一方で、米国等の特許出願、日本の意匠出願、及び、日本の商標出願等は審査請求制度がないため、審査請求がなくとも出願さえすれば審査に入ります。

この点が特に注意が必要で、審査請求を忘れると最大3年程度「ほったらかし」になります。
代理人が事務管理を行ってくれる場合には審査請求の期限が迫ると催促をしてもらえる場合があり、
最悪権利にならないのを防ぐことはできますが、それでも3年近く「権利化されるのを待ってた」といった事態になります。
また、審査は通常ですと1年近く順番待ちになります。
そこで検討が必要になってくるのが「早期審査制度」になります。

特許庁 特許出願の早期審査・早期審理について
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/v3souki.html

簡単に言えば、通常よりも審査結果が速く出してもらえる制度です。ただし、一定の条件を満たす必要があります。

注意点4:発明の公開タイミングはいつですか
基本的には「出願」(STEP5)が完了すれば公表してもらっても大丈夫になります。
ただし、上記の通り、出願しても審査結果によっては権利にならない場合があります。より法的な安定を考えるのであればできれば権利化後が望ましいです。

また、完璧を考えると、まず出願前であると、他者(厳密には秘密保持契約がない者です。)に発明を公表した時点で新規性がなくなり、権利化できなくなります。
次に、他者の出願・審査段階の対象には「情報提供」という手続きが可能です。また、権利化されてからすぐの権利には「異議申立」が可能です。
簡単に言えば他社は権利化・権利化してすぐの特許権は潰しに行くことができます。
そのため、出願前~権利化したての特許権は法的な安定性が低いとも言えます。
交渉等で他者に知られた場合に妨害が入る可能性があるということです。
このような意味でも公開するよりもできるだけ早めに出願・権利化しておくのがより望ましいと言えます。
一方で、出願~権利化まで早期審査制度を利用しても半年程度(出願内容等により絶対ではありません。スーパー早期審査等で短くもできますし、長くなることもあります。)の期間が必要です。ここまで早くはできない場合が実務上はあります。
この場合であっても最低限「出願」が済ませてから公表するべきです。

上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。

この記事を書いたプロ

坪井央樹

弁理士・中小企業診断士の資格を持つ知財関連の専門家

坪井央樹(武和国際特許事務所)

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