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【知財】【基礎】はじめての出願 特許っておいくら?(シリーズ第3回)

2021年6月20日 公開 / 2022年4月3日更新

テーマ:知的財産

コラムカテゴリ:お金・保険

 シリーズ第1回で記載しました下記質問に答えるものになります。これも「ココナラ」の方で紹介したものを更新した内容です。

質問2:費用は?


質問2への結論

 ざっくりな金額で申し上げると、「弁理士に依頼して」「出願するだけなら」の条件(他にも条件はあります。)で「20~30万円」ぐらいが相場になります。条件・内訳・安くする方法・発生タイミングの詳細を下記に記載しています。

費用の内訳

 ほとんどの場合、費用は大きく分けて①特許庁へ納める費用と②弁理士費用の2種類があります。

①特許庁へ納める費用
 ①は法令で決まっています。下記URLで金額が分かります。改正でたまに変わるのでご注意下さい。

 特許庁 産業財産権関係料金一覧
 https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/hyou.html
 特許庁 手続料金計算システム
 https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/jidou-keisan/index.html
 特許庁 産業財産権関係料金一覧パンフレット
 https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/document/hyou/industrial_pcharge.pdf

 例えば、「日本国へ出願(PCT等ではない)」、「日本語」、「審査請求なし」という最低限の出願の場合「14000円」を納付します。
 出願時、審査請求時、登録時、更新時等に特許庁に納付を行います。通常は代理人に管理・納付を依頼します。
 納付の手続きを誤ると権利を失うことが多いので注意が必要です。
 また、中小企業・個人等は減免・猶予制度があります。詳しくは「安くするには」で後述します。

②弁理士費用
 ②弁理士費用は特許事務所・弁理士ごとに決められる為、厳密には見積・問い合わせをしないと把握はできません(昔は一律に決まっていたようです)。
 参考として日本弁理士会が弁理士報酬のアンケートを取っており、下記URLへアンケート結果が開示されています。ただし、この結果は少し古いです。

 日本弁理士会 弁理士の費用(報酬)アンケート
 https://www.jpaa.or.jp/howto-request/attorneyfee/attorneyfeequestionnaire/

費用に影響のある条件

 ①と②に影響がある条件は下記のようなものがあります。ただし、下記は代表的な例で、弁理士ごとの料金設定で異なります。
 条件A)弁理士に依頼するか否か
 条件B)審査請求
 条件C)外国の権利化
 条件D)書類規模(図面の枚数、請求項数、明細書ページ数、その他の書面作成)
 条件E)調査等の要否

ケース1)弁理士に頼らず自分で書類作成する場合
 「自社出願」や「内作」と呼ばれる(法律等で決まっている呼び方ではありません。)手続方法です。
 弁理士に頼らないため、弁理士費用が「0」になります。すべて自分で行う場合、つまり、最小限の費用で出願する場合には、「14000円」を特許庁へ納めれば出願できます。
 なお、出願後に弁理士へ依頼することも可能です。「中途受任」等と言われます。

 注意点1)
 よくトラブルになる(特に初めての人がよく誤解している点)のは「出願」しただけでは「特許権になりません」という点です。
 特許法上、「出願」という手続きとは別に「審査請求」という手続きが必要なのです。
 なお、審査請求の費用は比較的高いのでご注意下さい(上記の「産業財産権関係料金一覧」をご覧下さい)。
 最低でも14万円弱程度(請求項数で加算されます。)が必要になります。一定の条件下で安くすることができます。詳しくは「安くするには」で後述します。

 注意点2)
 出願書面は、法令によって方式が定まっています。出願書面を作る上で最も特殊なのが「特許請求の範囲」という書面(英語呼称で「クレーム(Claim)」と呼ぶ場合も多いです。)です。
 これが一般的な文章と大きく違うため、慣れた人でないと難しい書面です。これらは「知的財産相談・支援ポータルサイト」や特許事務所のホームページ等でサンプルが公開されています。ご参考まで。
 判例・審査基準等により「NGワード」もあります。また外国出願をする場合は英訳しやすい文章・外国出願フォーマットを親和性のある記載が必要になります。

②弁理士依頼の場合
 ただし、公的な支援制度があります。これも相談すれば弁理士を通して手続きできる場合が多いです。しつこいようですが、値段は弁理士によって違います。
 ちなみに相談だけですと、相談手数料を単独に支払う場合が多いですが、出願依頼を前提に相談すると、相談手数料部分は無料・出願手数料に含まれる場合が多いです。
 無料相談は公的な機関・商工会議所・日本弁理士会等が相談窓口を設置しています。そこに弁理士が配置されている場合も多いのでそういった無料相談を利用する方法があります。

 日本弁理士会アンケートでも分かりますが、
 料金は、1つの出願について規模に関係なく基本料があり、請求項の数、図面枚数、及び、明細書のページ数で料金を加算していくのが一般的です。
 大きく料金が変わるのが外国出願の有無です。なお、国によっては担当できない特許事務所もあります。外国出願があると料金が高くなる理由はいくつかありますが、主には外国側にも代理人が必要になるためです。
 ほかにも事情によっては書面が加わり(審査請求書、上申書、早期審査の事情説明書等があります。)、これらについてどの程度の料金とするかは弁理士・特許事務所によって異なります。
 多くの場合、料金表が設定されており、見積をしてもらえる場合が多いので、まずは見積もってもらうが安全になります。

安くするには

 補助金・助成金・減免・支援制度があります。公的なものになります。一方で社団法人等によるものもあります。
 公的なものは地方自治体によるものが多く、一律な制度ではありません。個々の住所・本社所在地ごとに調べる必要があります。
 一律ではありませんが、地方自治体によるものは先着順・予算次第で受付終了なものが多いです。ここも先願主義なのかと。

 例えば、審査請求の費用は下記の減免猶予制度等があります。
 特許庁
 https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/genmen/genmen20190401/index.html

 例えば、東京都は区ごとに補助金・助成金・支援制度があります。
 東京都知的財産総合センター
 https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/index.html
 出願人の住所ごとに支援制度が異なります。支援の対象、要件、補助率、上限額、書面は地域ごとに異なるので要注意です。
 出願時の弁理士費用を対象とする制度もあれば、中間処理等までも対象にする制度もあります。

 ほかにも知的財産権の専用の補助でなく、各補助金で知的財産権の取得費用が補助対象になっています。
 例えば、下記のような補助金では知的財産権取得費用が対象と明記されています(他にも可能な補助金はあります)。
 事業再構築補助金
 https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
 https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html

費用の発生タイミング/発生確率/平均値/期待値

 特許は審査過程がどのようになるか確定していません。そこで統計資料により期待値を計算してみました。
 下図のようなポイント・時系列で費用が発生します。



 上図の各イベントは下記の発生確率です。



 日本弁理士会アンケート、及び、法令で各イベントでは下記の費用が発生します。上記の通り、条件によって費用は異なり、あくまでも統計値です。



 上記の発生確率と平均値からして期待値を計算すると下記のようになります。



 期待値は時間による割引をしていません。特許は出願日から原則20年まで保護が可能です。10年以上の長期間で少しずつ費用が発生しますが、最もまとまって費用が発生するのは出願時でしょう。
 一言でまとめてしまえば、特許権は出願から消滅まで「80万円弱」程度の費用がかかるということになります。
 以上、「費用」の大雑把な話でした。

この記事を書いたプロ

坪井央樹

弁理士・中小企業診断士の資格を持つ知財関連の専門家

坪井央樹(武和国際特許事務所)

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