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坪井央樹

弁理士・中小企業診断士の資格を持つ知財関連の専門家

坪井央樹(つぼいひでき) / 弁理士

坪井央樹

コラム

【知財】【基礎】はじめての出願 知財戦略立案(シリーズ第5回)

2021年7月18日

テーマ:知的財産

コラムカテゴリ:ビジネス

シリーズ第1回で記載しました下記質問に対応するものになります。

質問3:どのくらい(期間)で権利になりますか?

質問5:どういったときに出願が必要ですか?


解説サイトの紹介

公的な機関が出しているものでは下記のようなサイトがございます。
特許庁 経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】
https://www.jpo.go.jp/support/example/chizai_senryaku_2020.html
特許庁 新事業創造に資する知財戦略事例集~「共創の知財戦略」実践に向けた取り組みと課題~
https://www.jpo.go.jp/support/example/chizai_senryaku_2021.html
東京都知的財産総合センター 中小企業経営者のための知的財産戦略マニュアル
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/manual/senryaku/
IP BASE 一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集
https://ipbase.go.jp/learn/example/

経営戦略と知財戦略

「知財戦略」は名前の通り、知的財産に関する戦略になります。
事業活動は何も計画性/戦略性がないと中々上手くいかないのが常です。知財も例外ではありません。
そこで、中小企業診断士/経営学的なアプローチで知財戦略の立案方法・留意点を紹介します。
中小企業診断士・一般的な経営学的な構成要素と整合を取ると、
「経営(総合)」・「人事・組織」・「技術」・「財務」・「マーケティング」等と分解でき、
知財戦略もこのような構成要素で分けた視点で考えられます。
すべて綿密に紹介すると膨大な量となりますので、今回は下記5つの視点で1点ずつポイントをあげて、総合した1例を紹介したいと思います。

人事・組織

知財活動をする上で中小企業が苦労されている1つに人材確保があります。
大企業には知財部門が存在する場合がほとんどであるのに対し、中小企業で知財部門のは珍しい方です(下記URLのデータによれば15%程度です。少し古いデータですが)。

第1回中小企業・地域知財支援研究会 資料5 中小企業における知財活動状況(4)知財活動の取組体制と課題③:知財管理担当者
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/chusyo/document/01-shiryou/shiryou05.pdf

そのため、中小企業の規模では経営者が知財活動の中心となる場合が多いです。

平成25年度中小企業等知財支援施策検討分析事業(中小企業の知的財産活動に関する基本調査)報告書
知的財産活動の実施体制(売上高別)図表58/知的財産活動の実施体制(従業員数規模別)図表59
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/document/chusho_chizai/03.pdf

これには知財業務の経験・知識を有する人材が不足している背景があります。
下記資料は2003年のものですが当時から知財人材は不足しており、今も大きな変化はありません。

第4回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ議事次第・配付資料
資料6-2 知的財産関連の人材育成ニーズについて(参考資料)
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/senryaku_wg/document/04-shiryou/paper08.pdf

人材不足は様々な業界で叫ばれている外部環境ですが、知財関連の人材も例外ではないです。
そのため、なかなか外部から人材を獲得するのが難しいというのが一般的な状況にあります。
そこで中小企業では社内的には兼任の担当者を設定し、外部の専門家の協力を得て実務的な運営をしている所が多いです。
特許関連業務は多くの種類がありますが、最も基本といってよいのが出願・権利化になります。
したがって、人材育成の観点からすると、できるだけ多くの人材に出願を経験させるというのが知的財産活動において最も基本的なものといえます。

技術

技術戦略と知財戦略は整合が取れていないといけません。
このように経営・知財・技術の戦略の整合を「三位一体」と呼ぶ場合もあります。
例えば、技術力がある/強化していく技術分野で特許権を多く取得します。特にマスコミ等は特許権の数で技術力を見る場合が多いです。
このように特許権の件数・技術分野の配置を「特許ポートフォリオ」等と呼びます。
ポートフォリオは、例えば、下図のようなバブルチャート形式の特許マップ等で表現されます。

特許マップで技術上、自社の得意(S)・不得意(W)な分野を明確にし、
得意技術をどう活かすか?不得意技術をどう補うか?といった課題を抽出する等を行います。

技術戦略との整合としては、強みにしていきたいところに特許権が集まる(=特許権が多く取得できる)かを中・長期的にチェックすることがまず肝要になります。
競合他社も素人ではありません。良い市場は狙ってきます。そこに計画通り特許権が取得できていけるかは一つの目安になります。

財務

特許権を取得するには、前回(第4回)に説明したような費用が発生します。
この費用は一時に集中して発生せず、下図のようなタイミングで費用が発生します。図内の時間は統計値で、法令等で確定しておらず、各案件で異なります。あくまで目安で参考にして下さい。

上図は国内の特許出願に絞ったフローですが、これに外国の権利が入ると、
パリ条約に基づく優先権の関係上、半年~1年後ぐらいに同じようなフローが外国の権利の方でも発生します。
これらのフローを見越して財務的な計画(特に費用の見積もり)を立案していくことが大事です。
特許は費用を納めないと権利が消滅してしまう場合が少なくありません。
事務的な管理も依頼できる事務所がありますので、依頼・連携していくのが1つの対応策になります。

マーケティング

マーケティングの指標において、特許件数はマーケットと相関が強いと言われます。
簡単に表現すれば、特許出願が多い分野は、マーケットも活発であるということです。
一般的には特許出願件数は「先行係数」に分類されます。
これは特許出願は発明品が流通・発表されてしまうと、基本的には新規性を失い、特許権が取得できなくなります。
また、先願主義法制下ではできるだけ他社より先に出願することが求められます。
そのため、製品の開発段階、つまり、実際に製品が流通するよりも前の段階で先手を打って特許出願はされる実態があります。
この実態からするとマーケットの盛り上がりより先に特許出願が活発化、先行するものとなります。

そこで特許文献を調査します。調査結果は、例えば「技術」で紹介したような特許マップ等で表現されます。
これにより他社がどこを狙っているか?激戦区となる部分はどこになるか?狙い目の部分はどこか?といった部分が把握でき、
競争戦略・競争回避を構築する材料となります。

なお、このような調査・特許マップの作成は特許事務所・特許調査会社等へ依頼することができます。

スケジューリング・管理

特許権は、出願・中間処理・権利維持(外国の権利も同様です。)といった管理が必要です。
管理は法律に基づき、特許庁へ料金納付、及び、法令で定まる手続きを行います。
まずは管理を行ってもらえる特許事務所を選んで出願を依頼するのをオススメします。
審査請求・外国出願・国内優先権主張出願・特許料の納付・更新・中間処理等は法令で期間・手続きが定まっています。
この手続きを失敗すると、どんな立派な技術であっても特許権が付与されない・権利が消滅する等の事態が発生してしまいます。

上記のように経営において特許権を管理するには様々なことが関与します。
一方で、特許情報から得られる経営情報もあります。
上記の通り、「人事・組織」・「技術」・「財務」・「マーケティング」・「スケジューリング・管理」を総合して計画できるのが理想です。
最も基本を言うとすればまず1件特許出願をしてみるということになります。
次のステップとしては年間単位で特許出願を計画してみるあたりが基本になります。
上記の内容はあくまでごく一部であり、他にも関与する事項はあります。

質問3:どのくらい(期間)で権利になりますか?

上記の「スケジューリング・管理」で説明したように、特許権を取得するまでには通常ですと数年がかかります。
具体的には、特許権は出願後、通常では「0~3年」の審査請求が可能な期間を経た後、1年程度の審査結果が来ます。
この後、中間処理をするのに半年~1年程度がかかります。
これは技術分野等によって異なります。出願が多い分野等は審査に時間がかかり、法令で「いつまでに」審査するような規定もありません。
そのため、他社とライセンスを結ぶ等を計画するには、かなり早めの準備が必要です。

また、上記の期間は「早期審査制度」等を利用すると短縮することができます。
上記の通り、技術分野により異なるので絶対の期間は保証できませんが、
例えば、早期審査制度を利用すると、半年程度で出願~権利化ができます。

質問5:どういったときに出願が必要ですか?

「イベント」があるときが1つのチェックポイントになります。
特許制度は基本的には他社による模倣を防ぐように制度設計されています。そのため、模倣されたくない自信作は権利で保護するべきというのが基本になります。
そして、特許権は新規性が要求される・先願主義である関係上、アイディアが固まった段階で速やかに出願しておくのが理想になります。
遅くとも新規性を失う製品の流通・発表等といった公知となる前には出願しないと後から権利にしたいと希望されてもできない場合が多いです。
そのため、「イベント」(例えば、展示会へ出展・プレスリリース・学会発表等です。)が計画されたときにチェックするというのが1つのやり方になります。
「イベント」の目玉になるような製品・技術であれば特許で保護する価値がある場合が多いからです。

知財戦略は各社により最適なものは異なります。上記のものは、あくまでも一例で特定の条件下になりますのでご注意下さい。

上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。

この記事を書いたプロ

坪井央樹

弁理士・中小企業診断士の資格を持つ知財関連の専門家

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