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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

起業・独立に欠かせない覚悟とは?

2024年2月13日

テーマ:起業・独立

コラムカテゴリ:ビジネス


【はじめに】

 この前年明けと思っていたら、早いものでもう2月です。
その2月最初のコラムです(もう中旬ですが)。

 どういう形での起業・開業にせよ
最初から現役時代以上、又は同等の月収を稼げることは
ほぼあり得ないのが現実の世界です。

 ここでは仕事の選別や開業場所等の問題以前に
これからは自分自身の努力で稼ぐという生活になるという事実。
その為の覚悟を問われることについて紹介したいと思います。

【生活の見直し=ダウンサイジングの取り組み】

 脱サラシニアが起業・独立した場合、
恐らく現役最後の時期の収入はサラリーマン時代のピークだった、
あるいはそれに近い金額を毎月得ていたと思われます。

 当然ながら、当時の生活はその収入あっての消費であり、
当たり前の生活だったとも言えるのではないでしょうか?

 ですが、仮に士業で開業した場合、
最初は認知度ゼロ、実績も当然ゼロ。

 運よく知人から受任したとしても簡単な案件ならば
1件5千円から1万円前後の報酬が一般的です。

 仮に元上場企業の管理職で
退職時の月収が月収が50万円だった方が資格起業した場合、
1件1万円の案件で換算すれば月50件こなすことで漸く同額です。
さらには、同額では新たに発生する事務所の賃貸料や事務経費の分だけ
事実上「減収」になるのです。

 単純計算でも1日に2件近くの相談があり、受任するのが前提です。
土日休みなど言っていられません。一日8時間労働ももはや別世界の話です。


 ですが、実際には月に1件あれば御の字でしょう。
先にも書いた通り誰もあなたの存在を知りませんし、
知ったとして経験ゼロの新米に大切な相談をする気にならないはずです。

 私の場合は友人知人以外の本当の第三者からの相談から受任したのは
開業後約1年後でした。

 無収入の月が続く事、それも場合によっては半年、1年、それ以上に…
こういう事態になればまずは「支出の引き締め」は必須案件になります。

 私の相談者の事例で言えば、以下のような支出がピックアップされました。

1)電話の問題
 何の疑問も持っていない方が多数だったのが固定電話とスマホの二刀流です。
今や在宅中でもスマホでのやりとりが100%と言う方が圧倒的です。
トイレでも室外でも、なかには入浴中でも即対応可能なスマホがあれば
ほぼ固定電話を持っている必要性は無いのではと思います。

 下手をすればオレオレ詐欺や怪しい儲け話の勧誘の対象でしかないのが
今の固定電話の置かれた立場と考えても大げさではありません。

 そのスマホにして問題となるのが、通信費の見直しが、特にシニア層は
不徹底であり、無関心なケースが目立つという点です。

 いったん契約したら心中覚悟?でもないと思うのですが、
なかなか通信会社の切り替えや新サービスへの乗り換えをしません。
ですが少し調べるだけで今の自分の使用実態に即した新サービスや
格安スマホの存在に気付くはずです。

 固定電話を廃止すればその分スマホに集中する訳ですから
携帯料金を如何に安く抑えるかは個人事業者として「経費削減」の第一歩です。

2)自動車保有の問題
 新たな仕事でクルマは必須アイテムであればここは無視して下さい。
ですが仕事上ではクルマを利用することがほぼ皆無というならば、
このまま所有することのメリット、デメリットを慎重に検討しましょう。

 駐車場代、ガソリン代、車検代に各種保険の費用をかけてまで
所有するメリットは何か? せいぜい週に一度気分転換にドライブする。
買い出しの為に週末にスーパーに出向くだけ。

 この程度の頻度であればカーシェアやその都度のレンタカーで
十分事足りますし、長い目で見れば費用は半減するはずです。

 中にはクルマを持っている、乗らなければ家族から文句を言われる、
仕方なく週に一度高速を使って遠出をしている。

 なんと往復の高速道路料金迄無駄に費用に上乗せしているのです!

 相談者とのやり取りの中で唯一これは確かにその通りかもと思ったのは
非常時の際の寝床、冷暖房完備の避難小屋というものでした。
確かに、ガソリンさえ十分であればプライベート空間を確保出来ますし
空調によって夏でも冬でも凌ぎやすいのも事実でしょう。
停電時であればなおさらですし、車載ラジオで情報収集も可能です。

 こういう役割をクルマに求めるのであれば、必要不可欠なアイテムと
考えることに異存はありません。

3)惰性・慣習の問題
 なくて七癖と同じで、気が付けば増えていたサブスク契約、
会社員時代に付き合いで作成した各種のクレジットカード類、
さがせばひとつやふたつは誰にも該当するものが出てくるはずです。

 こういった場合多くの方は「これから使う機会が来るかも?」
といった当てもなく根拠もない理由を探し出して後回しにしがちです。

 考えを転換して、「今まで使ってなければ今後も使わない。」
この基準で取捨選択を促進して下さい。
 
 特にクレジットカードは年会費の発生もありますし、
複数枚のカードを持つと利用頻度や金額が曖昧になりがちで
不要不急のものを衝動買いしがちになります。

 せいぜい2枚までに絞り込むことを目指して欲しいものです。

 カード利用時や通販などで発生する「ポイント還元」にも要注意です。

・あと今月いくらのお買い上げで来月からゴールド会員です。
・現在のポイントの有効期限が迫ってます!

 こういった連絡を受けると、
どういう訳か多くの方は「買わなきゃ損」「使わなきゃ損」と思います。
その結果、それほど欲しくないものや、一つで十分なのにあえて二つ買う。
結果として余分な出費を重ねるという落とし穴にはまるのです。

 本当に必要なものがあれば有効活用になりますが、
そうでなければ、あえて利用を見送ることで費用削減となることは
しっかりと認識しておいて欲しいのです。

4)見栄・世間体
 先にも挙げたクレジットカードの複数持ちは半分は見栄です。
カードの削減に難色を示したある方は、
会社員時代にはこれみよがしに同僚や部下の前でブラックやプラチナカードを
使って決済する時の周囲からの注目が忘れられないと言いました。

 ですがそういう場面とは縁遠くなった独立直後の貴方には
そのような理由だけで無駄な所有を続けることは何の意味も持ちません。

 同様に朝のルーティンとしてきた喫茶店でのモーニングタイム、
あるいは毎朝、毎昼の習慣化した自販機やスタバなどでの飲み物の購入。

 単価自体はさほど出なくても、これが毎日、毎週、毎月と積み重なれば
無視出来ない「浪費」なのは否定出来ません。

 スティック状のインスタントコーヒーや日本茶の類を事務所に常備し
お湯を沸かして飲むように切り替えるだけでかなりの削減が可能です。

 最後は、レアケースです。
なぜか「シニア割」を拒否するケースです。

 映画のシニア割を始め、全て一般料金で支払い続けることで
未だ現役世代をアピール? シニア世代を認めない? 
どうにも理解困難な拘りでした。

 そこまでして若く見られたいのかどうか、
私は逆に率先してシニア割での購入を始めてきました。
却って年齢詐称を疑われたらしく暫くは年齢確認の証明書提示を求められました。
安くなるなら年齢なんて関係ない。と割り切れば済むことなのですが…

 とにもかくにも、
削減可能な経費や支出は例外なくメスを入れることを躊躇しないことです。

「今の自分はそれに見合うだけの稼ぎをしていないのだから」

この一点に絞って生活習慣や生活水準のダウンサイジングを始めることです。

【身近なところにこそ営業活動を】

 相談者の中には起業直前、あるいは起業直後の方も多くいらっしゃいます。
その中で意外に無視出来ないものに「宣伝告知の迷走」があります。

 「先生から見てどの媒体で告知したら集客に役立ちますか?」
 「先生が利用しているサイトでの集客効果はどのくらいですか?」
 「このサイトが評判イイのですが、どう思われますか?」
 「今利用中のサイトで効果ありません、他のサイトを紹介して下さい」

 等と言ったネット広告や注目サイトでの宣伝に依存過多のケースです。

 似たような事例では
 「どの異業種交流会に参加すれば仕事に結びつきますか?」
 「仕事を紹介してくれるような方のいる交流会はありませんか?」

 これも他人依存の典型例ですね。

 私個人の見解ですが、業界の新参者であり認知度皆無の新米が
どんなサイトで自己紹介や宣伝をかけても効果は期待出来ません。

 立場を変えてみれば分かることですが、
自分が抱える重大事を、正体不明の新人士業従事者に宣伝文句だけで
おいそれと相談に足を運ぶでしょうか?

 同様に異業種交流会の参加も、お互いが自分の利益になるような相手を
探しに来るのが大半です、その中では新人は交流する価値が一段も二段も
下位に置かれて当たり前です。 無論そんな相手に新規の仕事を任せるような
危険極まりない行動を起こすはずもありません。

 却って微笑みながら接近してくる相手は「貴方自身を自分の獲物」と考えて
意味不明なセミナーへ勧誘したり、有料セミナーへの参加を求めてきます。
下手をすれば貴方の個人情報までを聞き出して利用出来そうな交際仲間や人脈へ
アプローチすることも考えられます。

 交流会では仕事探し、顧客探しに固執するのではなく
仕事上の師匠?的な存在を見出す事や同じようなレベルのパートナーとの
協業などを視野に入れた人脈作りを優先したほうが効果的なはずです。

 
 そして上記のような相談をする方の多くに見受けられた特徴があります。
それは身近な存在への告知をしていない、したがらないという点です。

 ざっと挙げれば、元の会社の上司や先輩、同期や同僚に後輩連中、
取引先の担当者や部門責任者などの交流のあった社外人脈。
さらに学生時代の友人や知人などに開業の案内や営業をかけていないのです。

 最初はいろいろな理由を口にしましたが、最後の最後は本音を言ってくれました。
「早期退職したことを学生時代の仲間には知られたくない。」
「友人知人にこびへつらうような真似は出来ない。」
「辞めてすぐに会社や取引先に仕事をくれとはとても言えない。」

 他には
「仕事が軌道に乗って成功した自分を見せに行くので今は無理。」
等の夢物語を口にした方もいました。

 理由はともかく、私に言わせれば「見栄と世間体」以外の何物でもありません。
特に(ある意味当然?)元管理職、それもかなり上位者だった方が該当します。
 
 自分が資本であり商売道具である個人事業者となれば、
自分の周囲全てが顧客候補なのです。
さらに言えば、貴方の事を知っている存在なのです。
今までの仕事ぶりや性格、人脈、スキルやノウハウも
もしかしたら貴方以上に知っているかもしれません。

 前述したようなネット上での告知のような
見知らぬ不特定多数を対象にした営業活動よりもよほど効率的なはずです。

 本来なら起業を決めて退職のカウントダウンが始まった時点で
在職中に第二の仕事のPRとどういう分野の相談を受けられるといったことを
社内外に告知することが理想的です。

 当然ながら旧友や知人に対しても同様で、気の置けない相手であれば
「同世代の私だから任せて安心」「同じ問題を抱える私が相談に乗ります」
「〇月〇日に開業です、乞うご期待!」くらいの意気込みで挨拶しましょう。

 飲食や物販等での開業であれば、不特定多数のユーザーの来店はあります。
その後リピーターになるか、一度きりの付き合いになるかは自助努力によって
左右されるものでしょう。
 
 ですが士業での開業の場合はこういうわけにはいきません。
自分が専門とする悩みや相談案件を抱えるユーザーがどこにいるか?
いたとしても自分の拠点との距離が適当かどうか?
多数いる同業者の中から自分を見出してくれるにはどうすれば?
さらに実際に足を運んでくれ相談案件を話してくれるかどうか?
最後は受任に至るまでの信頼を勝ち取れるかどうか?

 ここまでのステップを踏んで、ようやくひとりの顧客を獲得出来るのです。
がむしゃらに、ひたむきに営業活動をする理由はここにあるのです。



 どうしても見栄や世間体を捨てられない、と言った方はどうすれば?

 残念ながらこういう方はひとり起業や独立には不向きと言わざるを得ません。
まずは開業中の先輩士業に雇ってもらい、宮仕えから始めることで、
長い時間をかけて地ならしをしておくことをお薦めします。 

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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