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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

改正マイナンバー法によって何が変わる?

2023年6月9日

テーマ:最近の話題から

コラムカテゴリ:くらし


【はじめに】

 紙の保険証の廃止、マイナンバカード一本化確定!

 先日の新聞やテレビの報道でご存じだと思いますが、
2日の参院本会議で改正マイナンバー法が可決・成立しました。

 これによって来年2024年の秋には現行の紙の保険証は廃止となり、
マイナンバーカードへ一体化された「マイナ保険証」に統一されます。

 今日はこの件について紹介したいと思います。


【改正内容のポイント】

 ここでは新聞紙上で紹介された内容を掲載しました。

1)マイナ保険証の実質的な義務化
 現行の保険証は来年の秋以降「1年の猶予期間」を経て
 完全に使えなくします。

 カード未保有者に対しては「資格確認書」を発行するも
 これも1年間の有効期間とされ、窓口での自己負担額は
 カード利用よりも割高に設定することが検討されるようです。

2)給付金の受け取り口座の登録の拡大
 年金の受給口座情報を日本年金機構から政府に提供することを
 事前に当人宛に通知して「不同意」の連絡が無ければ
 概ね1か月後には「同意とされる」事で口座登録の拡大を図ります。

3)マイナンバーの利用範囲の拡大
 これまでは「税・社会保障・災害対策」の3分野限定の利用範囲を
 引っ越しの際の自動車変更登録等、利用出来る範囲を拡大させます。

4)マイナンバー用途の拡大を容易に
 給付金の新設 の際に政省令によってマイナンバーからの情報提供が
 可能に。

5)マイナカードの海外交付
 従来は海外から一時帰国して交付だったものが在外公館で交付が可能に。

6)氏名にフリガナ表記
 漢字のみの記載からフリガナ表記も追加が可能に。

 金融機関の口座名義は「カタカナ」で登録しており、
マイナンバーカードでは漢字名での登録となっており、
双方を照合するシステム自体が未だになかったことには驚きですが、
さらに照合システムの完成は「年内をめど」と報道されています。

 これではカードの取得は「システムの完成」後の「運営状態の様子見」
と考えるユーザーが増加しても致し方ないでしょう。


 一般庶民にとっては大きく関係してくるのは、
1)~3)の項目ではないでしょうか?

 特に2)の年金受給の口座情報の政府の把握や3)の利用範囲の拡大は
いよいよ個人資産への紐付け=個人資産のガラス張りを連想してしまいます。

 

 参考までに、当初政府は「2023年3月までにほぼ全国民に普及させる」
としていましたが、申請率は約8割で、交付率は7割超だったそうです。

【依然根強い不安案件】

 予定よりは遅れているものの、交付率、申請率は順調に伸長していますが、
残念ながら懸案事項も発生していることがやはり大いに気になります。

 主なものとしては、
年金や給付金を受け取るためにマイナンバーと預貯金口座をひも付けする
公金受取口座で、別人の口座情報を誤って登録するミスがありました。
 
 これが昨年7月以降で6自治体で計11件発生しているそうです。
ただ、今の時点ではこれによって誤入金された事実はないということでした。

 このトラブルの原因となったのは
マイナポータルの利用者が操作した際の入力ミスだったそうです。

 即ちナイナンバーカード取得者に
ポイントを還元する「マイナポイント」の手続きの為に、
自治体の支援窓口の端末で手続きを終えた後に
「ログアウトしないまま」端末を離れた結果、
次の手続きを行った人の口座情報が上書きされる形となり、
前の人のアカウントに誤登録されてしまったとのことでした。

 登録を行うのは原則本人とされています、
不慣れな人であれば、悪気はなくともログアウトを忘れること、
また使い慣れた人であってもうっかりミスは避けられません。

 まさに見本のようなアナログ的なヒューマンエラーでしょう。

 他にもマイナンバーカードに関するトラブルとしては
以前にも紹介したコンビニでの証明書の発行サービスで
別人の住民票の写しが交付されてます。
(横浜市だけで10件18人分が誤交付)

 マイナ保険証では
2021年10月から22年11月末にかけて、
別人の情報が紐づけられるトラブルが約7,300件も発生しました。
医療費等の情報が他人に閲覧された可能性があります。


 など等、マイナンバーカードへの一元化に関してのトラブルが
なかなか止まりません。

 それもシステムの不備だけではなく、
人為的ミスが多発という点がどうにも気がかりです。

 政府としては極力人の手による作業を排してデジタル化推進で
このような不安案件の解消を目指すとしています。

 まずは万全な管理体制とセキュリティの信頼性を確立してからの
各種手続きの一本化を目指して欲しいと思うのは私だけはないと思うのですが?

【相談者との会話】

 先日もある相談者との雑談の中で
マイナンバーカードへの一元化について話す機会がありました。

 お互いに一本化することに一長一短があることは理解しています。
ただ利便性とリスク発症のバランスが問題であるという点も一致しました。

 例えば来年秋以降に予定通り保険証が一体化されれば、
うっかり保険証を持たずに来院し自宅まで取りに戻るとか、
全額自己負担で支払いを強いられるといった窮状を招く事もなくなります。

 顔なじみのかかりつけであれば平身低頭し次回には必ず持参しますと
病院スタッフを拝み倒すといった苦労はなくなるでしょう。

 私の知る範囲では、
概ね70代までなら既にスマホを所有しています。
どこまで使いこなしているかは別ですが、
ほぼ外出時には持ち歩いているとのことでした。
これならいちいちタンスの中から保険証だけを出す手間は省け、
うっかり忘れも無くなるのは確かです。

 ですが、あまりに多方面の情報、それも個人情報を
ひとつのカードに集約・統合することのリスクも同時に検討すべきでしょう。

 うっかり紛失、破損、あるいは盗難の場合
保険証だけなら被害は限定的ですが、マイナカードであれば
そうはいきません。

 変な例えですが、最近の都心のJRや私鉄の相互乗り入れで
スムースな乗り換えや遠隔地にも乗り換えなしでの行き来が可能になりました。

 ですが、いったんどこかの路線でトラブルが発生した時に
今までは無関係だった乗り入れ路線のダイヤ迄大きな影響を受けるようになった。
これもまた事実です。

 相談者とのやり取りの最後は、
「なんにしても、カード取得のメリットや必要性を感じないまま
やみくもに普及だけを急かしたことが間違いのもとだった。」でした。

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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