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藪﨑秀實

不動産や相続の悩みに応える認知症対策と家族信託のプロ

藪﨑秀實(やぶさきひでみ) / 宅地建物取引士

株式会社 あいしん不動産

コラム

生前贈与と死後相続、譲るタイミングで節税効果に大きな違いが

2019年11月11日

テーマ:生前贈与

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 相続 手続き

自分の財産を遺族に残す方法として、生前贈与と死後相続の大きく二つにわけられます。いずれを選択するにしても、計画性がないまま進めると、残した家族に負担をかける可能性があります。今回は、生前贈与と死後相続についてご説明します。

生前贈与のメリットとデメリット

自分が亡くなった後に配偶者や子にできるだけ財産を残してやりたいという気持ちは、親であれば誰もが持っているのではないでしょうか。

しかし何の計画性もなく財産を残そうとすると、場合によっては残された遺族に税金という重い負担を背負わせてしまうこともありえます。そこで考えるべきは自分の財産を生前贈与にするか死後相続にするかです。ただしこれもケースバイケースでタイミングを間違えると、どちらにしても負担が増えてしまいます。

生前贈与に関しては贈与するものやタイミングによっても、節税効果に大きな違いがあります。そこで、まずはそれぞれの特徴やメリット、デメリットについてみていきましょう。

生前贈与とは、文字通り生きている間に自分の財産を遺族またはそれ以外の人に譲ることをいいます。

生前贈与の最大のメリットは、被相続人の意思を最大限に活かせる点です。相続には遺留分というものがあり、相続人であれば最低限の相続を受ける権利を行使することができるため、必ずしも自分の譲りたい相手に100%譲ることはできません。

しかし贈与であれば、遺留分といったものはないため、自分の譲りたい相手だけに財産を贈与することが可能です。

生前贈与のメリット 節税効果について

もう一つのメリットとして、相続税の節税対策になることが挙げられます。贈与は年間で110万円以下であれば、贈与税がかかりません(暦年課税制度)。これを利用することで相続税の節税が可能になります。例えば相続人が2人(子ども)いて、財産が1億円あった場合の相続税額を算出してみます。

1億円-(基礎控除額3,000万円+法定相続人の人数×600万円)=5,800万円
5,800万円×(法定相続分に応じた取得金額)0.5=2,900万円
(2,900万円×税率15%)-控除額50万円=385万円

385万円が相続人一人当たりの相続税額になります。

これに対し、生前に相続人2人に10年間の間、毎年100万円ずつ贈与した場合の相続税額を算出してみます。

8,000万円-(基礎控除額3,000万円+法定相続人の人数×600万円)=3,800万円
3,800万円×(法定相続分に応じた取得金額)0.5=1,900万円
(1,900万円×税率15%)-控除額50万円=235万円

235万円が相続人一人当たりの相続税額になります。

つまり事前に生前贈与をしたことで一人当たりの相続税が150万円も減額されるのです。

さらに贈与する相手が子ではなく孫の場合、年間110万円を超えた場合でも贈与税の税率が優遇されるため、より節税効果が高まります。

生前贈与の注意点 3年加算ルールとは

これに対してデメリットは3年加算ルールというものがあり、被相続人が亡くなった場合、過去3年間に贈与した額は相続分に組み込まれることになります。

上述した例で見ると、仮に子ども2人に亡くなる前年まで100万円ずつ贈与していたとすれば、相続税の計算は8,000万円ではなく8,600万円を基に算出することになります。

もう一つのデメリットが、生前贈与は土地や不動産には向かないという点です。現金で贈与する場合、上述した暦年課税制度のほかに相続時精算課税制度という方法があります。この方法であれば、2,500万円までであれば、一定の条件を果たすことで何回でも非課税で贈与が可能です。

しかしこの方法で土地や不動産の贈与を行う場合、登録免許税・不動産取得税は免除されません。そのため相続よりも税負担が大きくなってしまうこともありえます。

死後相続のメリットとデメリット

生前贈与に対して死後相続は、被相続人が亡くなった後、相続人が被相続人の遺産を引き継ぐ際ことであり、その際に課せられるのが相続税です。

死後相続のメリットは、遺書に被相続人の意思を明示できる点にあります。生前贈与は相続税の節税対策として効果的と説明しましたが、基本的には文書などに残すことはないため、後にそれが生前贈与であることを証明することが難しい場合があります。

しかし相続で正式な遺書を残しておけば、そうした問題はありません。また現金、土地、不動産、会社などを財産として引き継ぐことができる点も、死後相続のメリットといえます。

これに対してデメリットは、もし被相続人に借金や負債があった場合、それも引き継がなくてはならない点です。相続放棄をすればプラス財産の相続も放棄することになるため、注意が必要です。

節税効果が高いのは?

ここまで生前贈与と死後相続、それぞれの特徴やメリット・デメリットを見てきました。

そのうえで、どちらのほうが節税効果が高いのかについてですが、これについてはさまざまな状況によって変わることもあるため、一概にはいえません。しかし、基本的には資産額の多い人であれば生前贈与を活用したほうが節税効果は高くなるといえます。

ただし資産が土地、不動産の場合は、資産価値の高い低いは関係なく圧倒的に死後相続のほうが節税効果があります。

生前贈与と死後相続、もしどちらにするか悩んだ場合は資産額がどの程度あるのか、その資産は現金なのか、土地、不動産なのかを明確にしたうえで専門家と相談し、決断されることをおすすめします。

この記事を書いたプロ

藪﨑秀實

不動産や相続の悩みに応える認知症対策と家族信託のプロ

藪﨑秀實(株式会社 あいしん不動産)

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