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知識だけでは「理解した」とは言えない
先日、子どもと話をしていた時のことです。深海魚の話題から水圧、そして大気圧の話になりました。
「じゃあ、大気圧って何?」と尋ねると、子どもは「1013hPaでしょ?」と答えました。
「よく知ってるね」と感心しつつ、「それって、どんな状態のことを表しているの?」と聞き返すと、少し困った様子で「大気圧はそういうもの」と答えました。
少し意地悪な質問だったかもしれません。しかし、私が知りたかったのは数値そのものではなく、その数値が意味している“現象”でした。
大気圧とは、地球上の私たちが常に空気の重さによって押されている状態のことです。地表では、1平方センチメートルあたり約1kg重(kgf)、つまり約1kgの重さに相当する力がかかっています。
これを広い面積で考えると、1平方メートルではおよそ10トンもの力になります。私たちは普段意識していませんが、実は巨大な空気の重さに包まれて生活しているわけです。
例えば、100平方センチメートルほどの吸盤なら、理論上は約100kgfもの力で押さえつけられることになります。大きめの吸盤がなかなか外れないのは、この大気圧の力が働いているためです。
つまり、吸盤を使った経験があれば、「大気圧」というものを感覚的に理解できます。
ところが、「大気圧=1013hPa」という知識だけでは、その現象が生活の中でどのように働いているのかを本当の意味で理解しているとは言えません。
知識を覚えることと、意味を理解することは別なのです。
最近では、こうした「知識はあるが本質が理解できていない」という傾向が教育現場でも問題視されているそうです。単なる暗記だけでは、実社会で応用が利きません。
知識と知恵は違います。知恵とは、得た知識を現実の中で活かせる力のことです。これからの社会で求められるのは、単なる知識量ではなく「理解し、応用できる力」ではないでしょうか。
コンピュータは物理法則の上で動いている
では、この大気圧の話がコンピュータと何の関係があるのでしょうか。
実は、非常に深い関係があります。
パソコンの記録装置として長年使われてきたHDD(ハードディスクドライブ)は、円盤状のディスクに磁気でデータを書き込んでいます。
この時、データを読み書きする「ヘッド」は、ディスクに直接触れているわけではありません。
ヘッドには「スライダ」と呼ばれる部品があり、ディスクが高速回転することで発生する空気の流れを利用して、ディスク表面の極めて近い位置を浮上しています。これは「空気軸受」と呼ばれる仕組みです。
つまりHDDは、空気の流体特性を利用して動作している装置なのです。
そのため、気圧や空気密度の変化は、ヘッドの浮上特性にも影響を与えます。HDDに動作高度制限があるのはこのためです。
さらに、ヘッドとディスクの間隔は十数ナノメートル程度しかありません。これは髪の毛の太さの数千分の1という極めて狭い距離です。
その状態で動作しているため、アクセス中に強い衝撃や振動が加わると、ヘッドがディスクに接触して傷を付けることがあります。これを「ヘッドクラッシュ」と呼びます。
ディスク表面に傷が入ると、記録データの読み取りが困難になり、最悪の場合はデータ復旧が極めて難しい状態になります。
そのため、HDD搭載パソコンは動作中の衝撃に弱く、持ち運びの際には電源を落とすことが推奨されてきました。
なお、SSD(半導体ストレージ)は回転機構を持たないため、HDDのように振動や衝撃によるヘッドクラッシュの問題は大幅に軽減されています。
しかし、半導体には半導体特有の弱点があります。
近年では、宇宙線などによる高エネルギー粒子がメモリや制御回路に影響を与え、一時的な誤動作を引き起こす『SEU(Single Event Upset)』と呼ばれる現象も知られています。
これはビット反転などを引き起こす現象で、サーバーや宇宙機器など高い信頼性が求められる分野では重要な課題になっています。
このように、SSDを含む半導体機器もまた、自然界の物理現象とは無関係ではないのです。
また近年では、HDD内部にヘリウムガスを封入した「ヘリウムHDD」も登場しています。
ヘリウムは空気より密度が低く流体抵抗が小さいため、ディスク回転時の負荷を減らし、低消費電力化や発熱・騒音低減に貢献します。
このように、一見すると無関係に思える大気圧や流体力学の知識が、実はコンピュータ技術と密接につながっているのです。
これからのITに求められる「工学的視点」
ITサポートの技術者は、ただ単に部品交換屋いわゆる俗語でチェンジニアとか、御用聞きだと思われているかもしれません。実際にそういう業者も多いですが、私は常日頃から情報収集と研究・検証行っており、コンピュータサポートをできるだけ工学的な観点から行うようにしています。
ITというと、プログラミングだけをイメージする人も少なくありません。
しかし実際には、コンピュータは電子工学、機械工学、材料工学、熱力学、通信工学など、非常に広い分野の技術の上に成り立っています。
特にITサポートやハードウェア分野では、「なぜその現象が起きるのか」を物理的・工学的に理解する力が重要になります。
単に部品を交換するだけでは、本当の原因分析や再発防止にはつながりません。
例えば、
・なぜ熱暴走が起きるのか
・なぜ電源が劣化するのか
・なぜ振動で故障するのか
・なぜ通信が不安定になるのか
こうした問題の背景には、必ず物理法則や工学的な理由があります。
これからのIT技術者に求められるのは、単なる知識量や操作スキルだけではなく、「現象を理解する力」です。
「パソコンとほこり」
http://www.kumin.ne.jp/kiw/hokori.htm


