マイベストプロ大阪
小堀將三

充実したマンションライフを支えるマンション管理士

小堀將三(こぼりしょうぞう) / マンション管理士

マンション管理士事務所JU

コラム

大規模修繕工事実施による固定資産税減税措置について

2022年12月15日

テーマ:税金関連

コラムカテゴリ:住宅・建物

 大規模修繕工事を実施完了させた場合に、翌年度分の固定資産税3分の1減額する特別措置が創設される予定であることを、このコラム欄でお知らせしましたが、この記事へのアクセス数がとても多く、関心を持たれた方がかなりいらっしゃるようです。また、メールでの問い合わせもありました。
 この記事でも書かせていただきましたが、この特別措置を受けるためには、「マンション管理計画認定制度」の認定基準をクリアーして認定してもらう必要があります。ただし認定を受けるには、総会決議を取らなければなりませんし、申請の為の事務負担が増えます。また、5年毎の更新費用がかかります。ですから、これらのデメリットだけでなく、メリットの1つとして今回の特別措置の創設が考えられました。国は、「マンション管理計画認定制度」を普及させるために、何らかのインセンティブが必要だったのです。
 この「マンション管理計画認定制度」が創設された経緯ですが、もともとは管理不全のマンションを何とかしなければならないという議論から始まったと思います。ご存じ方も多いと思いますが、滋賀県野洲市の廃墟同然のマンションが行政代執行で解体されました。市はマンションの所有者達に建替え等の対応を求めましたが、所有者不明の方が多いため合意形成ができずに時が過ぎてしまい、やむを得ず公費で解体したのです。全国でこのようなマンションが少なからずあり、ここまでの廃墟ではなくても、これに近いマンションはかなり存在します。
 次の写真を見ていただければわかりますように、外壁のタイルの塊が落ちたままのマンションや、天井や柱が剥き出しになっているマンション、このようなマンションが多いのです。

 本来、マンションの管理は区分所有者が主体となって行うものですが、区分所有者の老齢化等で自分達の力で管理が難しくなってきたマンションが増え続けています。改正される前のマンション管理適正化法では、都道府県等の責務については次の条文が規定されていました。
「国及び地方公共団体は、マンションの管理の適正化に資するため、管理組合又はマンションの区分所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない。」
 つまり、都道府県等は、管理組合や区分所有者等の要望があれば、情報と資料の提供するように努力しなさい。というだけでした。たとえマンション管理が不全であっても、マンション管理は管理組合が主体となって行うべきという考えで介入できなかったのです。
 その為、新たな改正で以下の2つの条文が追加されました。
「都道府県等は、マンション管理適正化指針に即し、管理組合の管理者等(管理者等が置かれていないときは、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等。次頁において同じ。)に対し、マンションの管理の適正化を図るために必要な助言及び指導をすることができる。」
「都道府県知事(市又は第百四条の二第一項の規定により同項に規定するマンション管理適正化推進行政事務を処理する町村の区域内にあっては、それぞれの長。以下『都道府県知事等』という。)は、管理組合の運営がマンション管理適正化指針に照らして著しく不適切であることを把握したときは、当該管理組合の管理者等に対し、マンション管理適正化指針に即したマンションの管理を行うよう勧告することができる。」
 この条文によって、都道府県等はマンションの管理が適正に行われるように助言指導ができ、管理不全のマンションには勧告することができるようになりました。
 しかし、廃墟同然のマンションや管理規約が無く管理費等の徴収もままならない管理不全のマンションを、適正に管理運営できるようにするためには、相当な時間と費用がかかってしまいますので、このようなマンションに関われる数はごくわずかで、その間にも管理不全マンションが増え続けていきます。
 ですから、既に管理不全であるマンションの再生を行っている間に、管理不全マンションがこれ以上増えないようにと考えたのです。その為の施策が、「マンション管理計画認定制度」なのです。ですから、認定基準は、管理不全にならないように、総会や理事会の開催有無や管理者の選任有無、管理規約の制定有無という管理組合運営の基本的な内容ができているかどうかと、建物の維持管理に必要な長期修繕計画の作成有無、その計画に基づいた修繕積立金を徴収できているかどうかなのです。まずは、管理不全のマンションの数が増えないようにして、本来行うべき管理不全に陥っているマンションの再生に時間と費用を傾注して、全てのマンションが適正に管理を行えるようにと国は考えたのです。

  マンション管理の新制度の概要

 是非、ご自分のマンションが認定基準をどれくらいクリアーできているのかを調べてみて下さい。全部クリアーできていれば認定されます。一方、マンション管理業協会が創設した「マンション管理適正評価制度」というのがあり、こちらでは点数で6段階に評価されます。一度管理会社の担当者に制度内容の詳細を聞いてみて下さい。
 北海道札幌市の賃貸マンションの建物老朽化問題がHTB北海道のニュースで報道されましたので、ご覧ください。このようなマンションがこれ以上増えないようにしないと本当にいけないのです。

  老いるマンション 大規模修繕の費用が莫大になる問題とは その解決方法は?
  HTB北海道ニュース

この記事を書いたプロ

小堀將三

充実したマンションライフを支えるマンション管理士

小堀將三(マンション管理士事務所JU)

Share

関連するコラム

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ大阪
  3. 大阪の住宅・建物
  4. 大阪の住宅その他
  5. 小堀將三
  6. コラム一覧
  7. 大規模修繕工事実施による固定資産税減税措置について

© My Best Pro