22 兼聴すれば明るく、偏信すれば暗し
「勝者の愚行」という言葉は、ウィンストン・チャーチルの言葉です。
彼は、回顧録中で「第2次世界大戦は第1次世界大戦の『勝者の愚行』から起こった」と書いています。
彼の言う勝者の愚行の一つは、第1次世界大戦の戦勝国の政治家が敗戦国ドイツに対する戦勝国国民の復讐の激情を抑えることができず、ドイツに対し支払い能力を遥かに超える賠償義務を課して現物資産を取り立てたことです。
もう一つの愚行は、ドイツに軍隊を残したことです。
その結果、ドイツは第1の勝者の愚行により物価の高騰、ハイパーインフレの発生、中産階級の没落と国家経済の破綻を招き、この怨念の中から一部の民族に対する激しい憎悪の念を起こさせ、ナチズムの誕生と台頭を招いたというのです。その結果、ドイツに軍隊を残した第2の愚行とあいまって、第2次世界大戦が起こったというのです。
チャーチルが、この「勝者の愚行」という言葉を使ったことによって、第2次世界大戦の敗戦国ドイツの政治家も国民も慰められ、希望を持って戦後の苦難の道を歩き得たものと思われます。
それは、ドイツの敗戦の日(1945年5月8日)から、ちょうど40 年目の日に、その時の西ドイツ大統領が、世界に向けて演説をした「荒れ野の40 年」の中で明確にされています。そのことは次コラムで紹介いたします。
このコラム23は、ウィンストン・チャーチルの言葉が第一次世界大戦敗戦国の国民に慰めと希望を与えた例を引いて、言葉の重要性を説いた一文です。



