17 褒める言葉
鎌倉末期から南北朝にかけての時代を、吉川英治は「理想も夢も正義もなく、ただ破壊と殺戮のみがある時代」と見なし、『私本太平記』を詩化された物語として書くことが最もふさわしいと述べています。
詩化した文章の一例として、日露戦争における有名な電文「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、連合艦隊ハ直チニ出動、之ヲ撃滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ波高シ」があります。
これは、秋山参謀が「天気晴朗なれど波高し」を一文で付け加えたことにより、晴天による視界の確保と波高の軍事的制約を暗示し、戦況の有利さを伝える日本海海戦の名文となりました。
(これは新著「大切にしたいもの 言葉とロータリーと生き方」に書いたもの(平均1000文字)を300文字前後に簡略化したものです。詳しくは、新著をご覧ください。)



