11 詩化
彫啄という言葉があります。辞書を引くと、①宝石などを加工研磨する、②詩文などを練り上げる、という意味があるとされています。つまり、言葉も宝石と同様に大切に扱い、かつ磨く必要があるのです。
20世紀最大の人物の一人とされるウィンストン・チャーチル(第2次世界大戦期の英国首相)は、「私は、(文章が)光り出すまで磨きをかける」という言葉を残しています。では、「文章に磨きをかける」とは具体的にどういうことなのでしょうか。
映画『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』の中に、その行為の描写が複数あります。
①言葉を考えながら、秘書にタイプさせ、それを逐次修正する。
②国会での演説原稿に、古代ローマの哲学者キケロの言葉を引用すべく、書斎に飛び込んでその著作を探す。
③全国民に向けたラジオ演説用原稿を、事前に何度も見直す。
④放送開始直前まで原稿を修正し続け、アナウンサーに「もう時間がない」と注意されてもなお筆を止めない。
⑤次のコラムの一行目の英文は、チャーチルが残した名文の一つ。そのような名文を数多く残した実績に表れる。
⑥戦後、回顧録『第二次世界大戦』を著し、それによりノーベル文学賞を受賞した。
なお、チャーチルがノーベル文学賞を受賞した理由は、「歴史的伝記的な文章で見せた卓越した描写と、高邁な人間の価値を擁護する雄弁術」によるものです。彼の演説はまさに言葉磨きの成果なのです。
これらの事実を通じて、言葉を磨くことの意味は明らかでしょう。言葉を磨くことは、人として、また現代を生きる私たちにとっても、大切にすべき営みなのです。
(これは新著「大切にしたいもの 言葉とロータリーと生き方」に書いたもの(平均1000文字)を300文字程度に簡略化したものです。詳しくは、新著をご覧ください。)



