9 翻訳者の言葉の力が、原作を生かす
哲学者・フリードリヒ・ニーチェはその著書の中で「(前略)持ち合わせの言葉が貧しければ、表現も貧しくなっているし、考えや感情を本当は充分に表しているとはいえない。同時にまた、その言葉の質と量が自分の考えや心を決めてもいる。語彙の少ない人は、考えも心の持ち方もがさつになるという具合にだ。だから、すぐれた人々との会話や読書、勉強によって言葉の質と量を増やすことは、自然と自分の考えや心を豊かにすることになるのだ」(芽野良男訳『ニーチェ全集7 曙光』ちくま学芸文庫 1993)と語っています。
人と人との交流は、言葉を交わすことで成り立ちます。
言葉を正しく使わないで、「あうんの呼吸」で相手の言わんとすることを知ること、「行間を読む」ことで相手の意図を知ること、相手がそうしてもらいたいと思うことを「忖度」して先走ってしてあげること等は、グローバル社会の中では通用しないと思われます。
日本人は、日本語として通用する言葉を磨き、いついかなる瞬間においても、適時適切な言葉を使えるようにする努力は必要であり、それは一生涯続けるべきだと思います。
それだけではなく、言葉は自らの考えを掘り下げていく道具でもあります。
言葉を用いて自分の考えを整理し、深めていけば、そこから新たな知恵も生まれます。
人を賢くしていくのも言葉なのです。
言葉を増やし正しく使うことは大切にすべきです。
(これは新著「大切にしたいもの 言葉とロータリーと生き方」に書いたもの(平均1000文字)を300文字程度に簡略化したものです。詳しくは、新著をご覧ください。)



