4.我が国のコーポレートガバナンス改革の流れ
1 M&Aは積極的になすべきだが、その巧拙は企業の成長力に差を付ける
コーポレートガバナンス改革の目的は、CGコードの表紙にも明確に書かれているように「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」である。
その目的達成のためには、M&Aは積極的になすべきであるが、次の問題が指摘されている。
(1)日本の企業は、規模が小さいためM&Aの対象になりやすい
2023年9月10日付け日本経済新聞記事「半導体素材、高シェア日本勢に死角 規模劣り買収リスク」によれば、我が国の半導体の生産を支える素材メーカーは約5割の世界シェアを持ちながら、企業規模が小さいため外資に買収されるリスクがあるを報じている。
規模の小さい上場会社は要注意ということになる。
(2)M&Aの巧拙は、成長力の差になる
2023年9月9日付け日本経済新聞の記事「イオンとセブン、覇者はどちらだ M&A・デジタルで差」は、M&Aは、その巧拙によって会社の成長力に大きな差が出ることを実証している。
(3)M&Aを成功に導く要諦
これは筆者の意見だが M&Aを成功に導くには、
➀ M&Aの対象となる会社に対する的確かつ深度ある調査(リサーチ)、
② その上に立っての3つのデューデリジェンス(DD)、
③ M&Aによるシナジー効果の定量的価値(買収価格算出の根拠)の算定
などが必要であると考える。
それができれば、大が小を呑むM&Aは言うまでもなく、蛇は寸にして人を呑むごとく小が大を呑むことも(2018年時価総額が3.8兆円の武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアーを約6兆2000億円で買収したように)、M&Aを武器に呑舟の魚になることも(GAFAMのごとく)可能である。
もっとも、独禁法により認められない場合があること(2022年にNVDAがARMを買収できなかったように)は別論であるが。
なお、この項に書いた「大が小を呑む」例は、3項に述べるニデック対TAKISAWAの買収劇にも見られる。