交通事故 23 後遺障害① 自賠責が認めなかった後遺障害を認めた裁判例
機械・装置について修理の見積金額をもって損害額だとの考えは失当
一般に、中古の機械・装置にかかる損害額とは、再調達価格×(1-原価償却割合)を上限としたものになります。
一例として、東京地方裁判所平成30年(ワ)第7565号令和3年7月13日民事第26部判決(TKC裁判例文献番号25589656)を引用します。
この事件の判決は駐車場の修理にかかる費用を損害額だとする主張に対し、以下のように判示しているのです。
すなわち、
「本件駐車場の修理内容が,枢要部分の装置等の取替えを含めた大規模な改修を加えるものであり,これまでメンテナンスされていなかった部品も交換されるといえること,機械式駐車場の法定耐用年数が15年とされているのに対し,本件事故の当時,本件駐車場は設置から既に約22年が経過していたこと(甲4)、機械式駐車場メーカーである株式会社A社のウェブサイトには,機械式駐車場は,その設置から15年から20年を経過すると機械の総入替えの時期となる旨の記載があること(乙1)などを考慮すると,原告及びB社が平成・・年・月から保守点検を毎月実施し,本件事故の数年前にはスイッチや操作盤,コンピュータ等を交換したことがある事実(甲22,37ないし41,弁論の全趣旨)を考慮したとしても,本件駐車場は,本件事故を契機として修理を行うことにより,その耐用年数が延長され,本件事故時よりも価値が増加するというべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。」と判示しているのです。
さらに同判決は、
・・・(中略)・・・
(イ)そこで検討するに,芝浦鑑定書は,本件駐車場の実務用推定耐用年数を法定耐用年数の1.5倍,最終残価率を10%とした上で,いわゆる定額法による経年原価率計算式に従えば22年経過時点において減価率が88%と算定されるところ,本件駐車場が月1回の定期的なメンテナンスを実施されており,「年数の経過にかかわらず,使用のための効用を発揮しているため,最低限度の価値を保持し続けているものと考えることが合理的」であると指摘して,新旧交換に伴う差益控除のための減価率を50%と算定している。
上記算定方法は,定額法により算定された減価率を,本件駐車場の現実の使用状況等を踏まえて修正するというものであり,合理的なものとして採用することができる。
(ウ)そうすると,芝浦鑑定書の算定に従い,前記アで認定した修理に要する費用のうち,・・・中略・・・「新価損害額」)に減価率50%を乗じて消耗の度合いを考慮し,これに取片づけ費用及び修理付帯費用を加算した額をもって損害と認定するのが相当である。