言葉8 書くことだ、しかも用紙1枚内に
ロータリークラブに入ると、しぜんに多くの友ができます。友とは、不思議な出会いによって得られるものです。ですから、いつ、いかなるとき、いかなる友を見いだすかは、興味をそそられるものがあります。
歴史の中には、敵軍の中にも友の姿が見られます。中国の三国志時代に光(こう)彩(さい)を放った関(かん)羽(う)と張(ちょう)遼(りょう)との関係も、その一つです。はじめ、関羽は、呂(りょ)布(ふ)軍との戦いの中で、敵将張遼に会います。張遼は呂布軍の将です。関羽は、曹操軍の驥(き)尾(び)に付す劉備軍の一武将の立場です。お互い、敵と味方に分かれながら、ああ、良き敵将かな!と思って眺め合い、そして矛(ほこ)を交えます。いずれも大(だい)剛(ごう)の者。勝負は尽きません。
やがて、呂布は破れ曹操に殺されます。張遼は死をかけて最後の一戦を試みようとしたのですが、関羽がやってきて、義(ぎ)のない犬死にをするなかれ!と言って、曹操に降伏することを勧(すす)めます。張遼は、それにより曹操の一武将になるのですが、その後、曹操と劉備との間に戦いが始まります。
そして、弱小軍である劉備軍は破れ、劉備は華北の袁(えん)紹(しょう)を頼って逃亡します。劉備の義弟、関羽は、劉備を逃がすため、曹操軍と最後まで戦いますが、衆(しゅう)寡(か)敵(てき)せず、ついに敗(はい)死(し)する覚悟を決めます。そこへやってきたのが、曹操軍の武将になった張遼です。張遼は関羽に会い、関羽には劉備の妻子を保護し劉備に引き合わせる責任があるではないか。それまでは死ぬなかれ!と言って、曹操に降伏することを勧めます。
このとき、関羽は、捕虜になる条件として、張遼を介して曹操に三つの約束をさせます。その約束の一つに、劉備が生きていることが分かったときは、関羽はいつでも曹操の下(もと)を去る、というものがあるのですから、関羽の凄(すご)さが分かります。また、曹操にその約束をさせただけでなく、約束を履行させた張遼も凄い人物です。
かくして、関羽は曹操の下、虜(りょ)将(しょう)となりますが、その恩返しとして袁紹方武将の二人、顔(がん)良(りょう)と文(ぶん)醜(しゅう)を討ち取った絵は、さながら三国志に、燦(さん)然(ぜん)と輝く一(いっ)幅(ぷく)の絵になっているほどです。その後、関羽は、曹操の下を去り、再び劉備と会い、やがて曹操軍との戦いで、張遼とはお互いを敵として戦っていくのですが、この二人はこのような中でも友情を持ち続けるのですから、凄いものです。
ロータリアンの間にも、このような友情はたくさん見られるように思います。