第2章 相続人 1本来の相続人
被後見人の遺言の制限
前述のように、人は、満15歳に達すれば、遺言をすることができます(961)。その場合は、未成年後見人がいてもその同意は不要です。成年被後見人も、事理を弁識する能力を一時回復した時においては、医師二人以上の立会いがあることで遺言をすることができます(973)。
しかしながら、未成年者にしろ、成年被後見人にしろ、後見されている身の者は、その置かれた立場の弱さから、後見人に有利な遺言をしてしまう危険があります。
そのため法(第966条)は、「被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。」と定めました。ここでいう「後見の計算の終了」というのは、後見の仕事が終わった後の費用の精算が終わった後という意味です。つまり、被後見人が後見人の影響を受けなくなった後の意味です。ただ、この規定も「直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。」と定めました。法は、被後見人が、近親者のためにする遺言まで無効にする必要はないと考えたのです。