4 法定相続分を超えると対抗要件が必要(改正法による新設規定)
3 遺言による遺産分割ができる
【条文】
第908条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
【顔説】
遺産分割は、相続人間の協議・調停・審判でするようの思われがちですが、被相続人じしんが遺言ですることもでき、また、被相続人が遺言で委託した第三者がすることもできるのです。
被相続人(遺言者)が、遺言で相続分の指定や相続分の指定の委託ができること(902)は前述しましたが、民法第908条で、相続財産を特定して相続人に取得させる“遺産分け”、すなわち遺産の分割の方法を定めることもできるのです。
この遺言は、「遺産分割方法の指定」と「遺産分割方法の指定の委託」という遺言です。
遺産分割方法の指定遺言は、多くの場合、特定の相続人に特定の財産を「相続させる」と書かれた遺言になります。
なお、注意すべきことですが、遺言による遺産分割方法の指定があった場合は、相続開始後、相続人の間で改めて遺産分割の協議をすることも、家庭裁判所が遺産分割の審判を下すこともできません。
次の判例がそれを明言しています。
【判例紹介】
最高裁二小平成3年4月19日判決
遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言(は)、・・・民法908条に・・・いう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ない・・・。
【最も多い遺言事項】
なお、遺言による遺産分割方法の指定(908)は、数ある遺言書の中で、最も多く書かれる遺言事項です。
前記最高裁判決(平成3年4月19日判決)は、裁判長の名を冠して香川判決といわれるほど有名になり、かつ、その後の実務の指標となった判決ですが、平成30年改正の相続法の中でも、香川判決を前提にしたものが数箇条見られます。
この香川判決と遺産分割方法の指定遺言に関しては、相続法では最も重要なものの一つですので、改めて第7章の 遺言 のところで解説いたします。