4 相続放棄問題 単純承認をしたものとみなされる場合
4 共同相続における権利の承継の対抗要件
平成30年の改正法で、第889条の2が設けられました。
【条文引用】
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定(注:法定相続分を定めた規定)により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分(注:法定相続分)を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
【解説】
これは、相続人が相続する財産を、他の相続人の債権者に対抗できることにする方法(889の2①)と、その相続した財産が債権である場合に、当該債権の債務者に対抗できることにする方法を定めた規定(889の2②)です。
すなわち、相続人が相続で取得する財産といえば、被相続人が遺言でもって与えてくれている財産(それには遺贈か遺産分割方法の指定かになる)か、相続開始後の遺産分割の結果取得する財産ということになりますが、その財産の取得がいずれであれ、その登記・登録をしないと、法定相続分を超える部分は、他の相続人の債権者には、対抗できないことにしたのです(889の2①)。
そして、その財産が債権である場合、その取得を当該債権の債務者に対抗するには、全相続人から債務者に通知をする必要がありますが、改正法は、当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなすことにしたのです(889の2②))。
なお、ここでいう債権は、当然に遺産分割の対象になる預貯金債権はいうまでもなく、可分債権であるため当然には遺産分割の対象にならない債権であっても、それが遺言によって特定の相続人に帰属せしめられたもの、又はそれを相続人全員の同意によって遺産分割の対象とされたものの双方を含みます(なお、この部分は、遺言事項の説明がないと分かりずらいと思いますので、第7章でもっと分かりやすく解説する予定です。)。
この改定規定は、改正前に諸説があったことから、立法で一説に絞ったことになります。