第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(3)寄与分の控除・加算型
相続税法22条及び評価通達は、相続税の対象になる財産の価額は相続時の時価によるものとすると定め、「時価」とは不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい,その価額は、評価通達の定めによって評価した価額による旨を定めていますが、宅地に関しては、原則として,市街地的形態を形成する地域にある宅地の場合については路線価方式により,それ以外の宅地については倍率方式により行う旨を定めています。
そして、私道供用宅地の価額は,路線価方式又は倍率方式により計算した価額(以下「自用地の価額」という。)の30/100に相当する価額によって評価し,この場合において,その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは,その私道の価額は評価しない旨を定めています。
すなわち、私道供用宅地 → 路線価などの30/100
ただし、不特定多数の者の通行に供されている場合は 0
ところで、ここでいう「私道供用宅地」とは、具体的にはどのような宅地をいうのか?
が争われた事件があり、その事件で、最高裁判所第三小法廷平成29年2月28日判決は、
① 建築基準法等の法令上の制約のある宅地(例えば、位置指定道路)のみならず、
② その他、当該宅地の客観的交換価値に低下が認められる宅地
をいう、と判示しました。
すなわち、
「相続税法22条は,・・・私道の用に供されている宅地については,それが第三者の通行の用に供され,所有者が自己の意思によって自由に使用,収益又は処分をすることに制約が存在することにより,その客観的交換価値が低下する場合に,そのような制約のない宅地と比較して,相続税に係る財産の評価において減額されるべきものということができる。・・・そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は,私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず,当該宅地の位置関係,形状等や道路としての利用状況,これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし,当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か,また,その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。」と基準を明らかにした上で、
当該事件では、「・・・本件歩道状空地は,車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので,いずれも相応の面積がある上に,本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また,本件各歩道状空地は,いずれも本件各共同住宅を建築する際,都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために,市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり,本件各共同住宅が存在する限りにおいて,上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。そして,これらの事情に照らせば,本件各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても,このことから直ちに本件各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできない。以上によれば,本件各歩道状空地の相続税に係る財産の評価につき,建築基準法等の法令による制約がある土地でないことや,所有者が市の指導を受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えて選択した結果として設置された私道であることのみを理由として,・・・具体的に検討することなく,減額をする必要がないとした原審の判断には,相続税法22条の解釈適用を誤った違法があるというべきである。」と判示しました。