交通事故 21 逸失利益⑫ 定期金賠償は認められるか?
これは当事務所が扱った交通事故事案で,岡山地方裁判所平成16年4月22日判決事件です。
事件になった交通事故は,冬の午後6時前という周りが暗くなってきた中,人身事故(第一事故)が発生したのを目撃した医者甲が,すぐに現場に駆けつけ,第一事故の加害者に交通整理をしてもらいながら,車道上に倒れていた被害者の老婦人乙の救命措置を施していたところへ,別の車が突っ込んできて医者甲が轢かれ,脳挫傷(7級),及び脊柱変形(11級)で併合6級の後遺症をこうむった事故(第二事故)です。
1 争点の一 過失相殺なし
この第二事故で,交通量の多い車道上にたたずんで第一事故の被害者乙を診ていた医者甲の過失を認め過失相殺ができるかどうかが争点の一つになりました。
判決は,医者甲が,車道上で第一事故の被害者を診ていたことについては,人命救助の必要のためのやむを得ぬ措置であったとして,甲には過失がないとして,過失相殺はしませんでした。
なお,第二事故の加害者には,前照灯をハイビームにしていなかったことなどで過失があったとされました。
2 高額賠償を勝ち取った例として新聞に報道される
なお,この件の争点は,過失相殺の可否のほか,多岐にわたりましたが,その全部について,被害者の請求が認められ,併合6級の後遺症の事件でありながら,損害賠償請求額としては,自賠責保険金のほかに,総額2億7025万5672円が認められ,遅延損害金を含め,3億1000万円以上の支払を受けた事件でした。なお,この金額は,過去最高額であるとして新聞紙上にも報道されたものです。