不動産 中間省略登記ができない理由
この問題は,小売商人がスーパーマーケット経営者と「業務委託契約書」を取り交わしてスーパーマーケットに出店した場合,賃借人としての保護は受け得ないのか?という問題です。
契約は,名称ではなく,契約の実体によって,判断されますので,たんに「業務委託契約」だからといって,賃貸借契約であることが否定されるものではありません。
実体が賃貸借契約だと判断される場合は,借家権者として保護されることになります。
裁判例には,賃貸借契約であると認めたもの,賃貸借契約であることを否定したものがあります。
まず,賃貸借契約を認めた裁判例から。
東京地方裁判所平成8年7月15日判決は,「以上認定したとおり、被告らは、本件店舗の中において原告の経営するスーパーマーケット部分とは明瞭に区画されている本件売場部分において、昭和45年から現在に至るまでの長年の間、場所を移動することもなく、内装工事費や設備機材費等全て自己負担のうえ、独自の経営判断と計算において、自ら開発した焼き立てパンの製造販売技術を用いて、営業を行ってきたものである。他方、原告は、被告から一旦売上金全額の入金を受け、経理上は全額売上げとして計上したうえで、売上金の一定割合の歩合金や諸費用を控除した残額を被告へ支払う方式により、右歩合金等を取得するものであるが、原告は、本件売場部分での営業自体には関与していないばかりか、内装工事費や設備費用等すら負担することもなく、まさに本件売場部分を提供することの対価として、保証金や歩合金を取得しているものである。したがって、本件契約は、本件売場部分の使用関係に関する限り賃貸借に関する法の適用を受けるべきものと解するのが相当であって、その使用関係の終了については被告らは借家法の規定による保護を受けるべきものというべきである。なお、本件契約にかかる契約書第20条には、『この契約は特定商品の販売業務の委嘱に関するものであって特定の賃貸借契約ではないから乙は契約の終了にあたって損害金立退料補償等如何なる名目を問わず甲に対し金銭その他如何なる請求もすることはできない」と規定されている。しかし、これは、右文言自体から明らかなように、契約終了の際に被告から金銭的請求をすることができないことを確認することに主眼のある条項であるばかりか、借家法6条が強行規定であることから考えても、本件契約の実態に則して検討した右判断を左右するものではない。」と判示しております。