後見人や特別代理人の身分の確認をしたい場合の、執るべき処置
家事審判官
「被相続人が経営していた会社名義の財産を,遺産分割の対象財産にしてほしいという要求もあるようですね。
相続人乙
「そうです。被相続人が経営している会社の株式は,全部被相続人のものですので,会社名義の財産といっても,個人の遺産と変わりません。その会社名義の財産は,結構ありますので,それを相続人間で分割していただきたいのです。
家事審判官
「それはできません。早い話,会社名義の不動産や預金を,特定の相続人が取得するという遺産分割協議書を書いても,法務局,銀行ともに,名義書換に応じないと思いますよ。会社名義の財産そのものは遺産ではないからです。遺産は,被相続人が有していた自社株でしかありません。あなたがた全相続人が,遺産分割により,それぞれ自社株を取得して株主となり,株主総会を開いて会社の解散決議をし,残余財産の分配として,会社の財産を分割することはできますが,被相続人の遺産分割としてはできませんねえ。
相続人乙
「では,被相続人の残した自社株式の遺産分割をした上で,その後の会社財産の分割方法についての約束事を,遺産分割の調停の席で,定めていただけませんか?」
家事審判官
「前段はできますが,後段はできません。すなわち,裁判所の調停委員会や家事審判官でできることは,遺産である株式の取得者を決めるところまでです。そこから先の話合いは,遺産分割の調停の場ではできません。なお,自社株の相続人間で,会社を解散する約束をしても,株主総会で解散決議をしないと,法的には無効ですから,こ念のため,お伝えしておきますよ。」