遺産分割⑬ 持戻し計算がなされる特別受益の範囲
昨日のコラムに書いた「遺産分割までのプロセス表」を見てください。
遺産分割までに相続人の合意又は裁判(判決又は審判)で確定しなければならいものの,
第一が,①の遺産の確定です。
遺産が確定しないと、遺産分割の話合いに入ることはできません。
もし、ある財産が遺産か否かが争いになった場合は、原則として、遺産確認訴訟を起こして判決が言い渡されその判決が確定するまでは遺産分割はできないのです。
第二が,➁の生前贈与財産の確定です。
生前贈与を受けた相続人は、遺産分割の際それを「持戻し」計算しないと、相続人間で不公平な遺産分割をすることになりますので、生前贈与がある場合は、その事実の有無、内容を確定する必要があるのです。
第三は、③の生前贈与の持戻し免除の有無の確定です。
生前贈与という事実はあるが贈与者(被相続人)から「持戻し免除の意思表示を受けている」という主張がなされたとき、はたして「持戻し免除の意思表示」があったのか否かを確定する必要があるのです。
第四は、④の遺産と持戻しされた生前贈与財産を評価することです。
財産の評価なしに、具体的相続分の算定は不可能ですので、財産評価をしないと、遺産分割の協議や調停は停止することになります。
第五は、⑤の寄与分の確定です。
遺産分割の協議や調停の場では、多くのケースで寄与分の申立てがなされます。この問題も、確定しないと、具体的相続分が計算できず、遺産分割ができません。
第六は、⑨の「遺贈」の確定です。
遺贈というのは、一般には相続人以外の者への遺贈のことをいいますが,ここでは,相続人への遺言書による特定財産の移転すなわち「遺産分割方法の指定」のことをいいます。
一般的には,被相続人が生前書いていた遺言書の中に、特定の遺産を特定の相続人(「受遺相続人」といわれます。)に「相続させる」と書いているような場合のことです。
その「遺贈」された財産は、遺産の中に含まれていますが、それは受遺相続人が取得していますので遺産分割の対象にはなりません。
しかし,遺産分割の対象にはならない遺贈であっても,他の遺産を分割する際、受遺相続人は、計算上、遺贈分を「持戻し」しなければならないのです。そのため,遺言書を見て,「遺贈」があったか否かを確認する必要があるのです。
なお,「遺贈」があれば,その財産を持戻し計算しますが,それは生前贈与の持戻しと同じく、相続人間の公平な分割のためです。
(なお、生前贈与と遺贈には、上位概念として「特別受益」という言葉が与えられており、また、これらの持戻しも「特別受益の持戻し」という概念で説明されています。)
第七は,⑩の遺贈の持戻し免除の有無の確定です。
受遺相続人から「遺贈の持戻し免除」があったという主張がなされたときは,その事実を確定する必要があるからです。
第八は、⑫の遺産分割の対象にする財産の確認です。
これは遺産の中にある預金は,可分債権であるので,遺産分割の対象にはなりませんが,相続人全員の同意があれば遺産分割の対象にできますので,それを遺産分割の対象財産に加えるかどうかを確認するものです。
最後は,⑬のどの遺産をどの相続人が取得するかを決める遺産分割を決めること(確定)です。