遺言執行者⑭遺留分減殺請求先に要注意
1,遺産から揚がる収益は,全相続人の分割債権であることに注意(誤解の多いところ)
遺産の中にある収益物件(例:賃貸マンション)から揚がる収益(賃料,利息,配当金など)は,遺産でもなければ,遺産分割の結果その収益物件を相続することになった相続人の財産でもありません。
それは全相続人が,指定相続分又は法定相続分に応じた分割債権として取得するものです(最高裁判所平成17年9月8日判決)。
父親が亡くなり,長男が,マンションの管理をし,賃料を受領していても,他の相続人から異議はでなかった。そして,その後の遺産分割で,そのマンションは長男が相続することになったとしても,相続開始後,遺産分割の時までに生じた賃料債権は,他の相続人にも権利があるので,注意が必要なのです。
2,遺産分割の対象にできる場合
遺産から揚がる収益で,相続開始時から遺産分割時までに生じたものは,全相続人が相続分で分割取得します(前述の判例)が,全相続人が合意すれば,これを遺産分割の対象にすることはできます(東京高裁昭和63年1月14日決定)。
その場合の調停条項の書き方(又は遺産分割協議条項)の例を示しておきます。
例:
当事者全員は,相手方の保管する別紙物件目録記載のマンションの平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日までの賃料収入を,本件遺産分割の対象とすることを確認する。