遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
契約書は、多くの場合、次のように、①「・・・契約書」という題名をつけ、②当事者名や契約の対象事項を書いた前文を置き、③本文に入り、④契約が成立した旨を書いた後文を置き、⑤契約日を書き、⑥当事者が記名押印(又は署名押印)をするという内容になり形式になっています。
①タイトル「・・・契約書」
②前文
③内容
④後文
⑤契約日
⑥当事者の記名押印
以下、それぞれについて、書くべき事項を記しておきます。
(1)タイトル(題名)
タイトルは具体的に書くべきです。「契約書」や「売買契約書」では不十分です。
「電器製品売買契約書」又は、より詳しく「P社製電器製品売買契約書」と書くべきです。
(2)前文(前書)
前文では、①誰と誰との間の契約か、②何についての契約か、は最低限書かなければなりませんが、その他にも、③契約の経緯や④契約を結ぶ動機も書いておくと、契約書の趣旨がより明確になり、紛争が生 じたとき、契約条項の解釈の指針になることが期待できます。
ア)契約当事者
前文は、多くの場合、次のような書き方になります。
最初に契約当事者が書かれますが、契約書の本文中繰り返し契約当事者の固有名詞を書くと、読むのに煩瑣であり、また、重要事項への注意度が薄れますので、契約当事者は、甲と乙、又は、売主と買主というように略表示されるのが一般です。
凸山機械株式会社(以下「甲」という。)と凹川部品株式会社(以下「乙」という。)とは、次のとおり、・・・につき、売買契約を締結する。
・法人が当事者の場合
法人が当事者になる場合は、登記された商号を用いることになります。支店名、営業所名まで書くには間違いです。しかし、担当部署を明らかにするため支店名等を書いておきたいというときは、かっこ書きで「凸山機械株式会社(取扱店・岡山支店)」等と書くとよいでしょう。しかし、契約の当事者はあくまで法人であることを忘れてはなりません。
・企業規模の大きい会社が同一の取引先と複数の契約を結んでいる場合で、同じ日付の契約書が他の支店や他の事業部で結ばれる可能性もある場合
この場合は、契約書に、識別のための記号・符号・番号等をつけるとよいでしょう。
イ)契約の対象
これはタイトルと同じか、それをより具体化したものになると思われます。
例えば、「定期建物賃貸借につき」とか「電子部品の継続的売買における基本的事項を定めるため」という表現になります。
ウ)契約に至る経緯
これらが書かれている契約書を見ることは少ないのですが、将来紛争が生じ契約書に記載された用語の解釈で争いが生じたときに、裁判所に解釈の指針を与えることがありますので、簡単でも書いておいた方がよいでしょう。
例えば、「本契約は、乙に実績は乏しく継続的な機械部品の供給能力があるかどうかについて不安はあったが、乙が最新鋭の機械を購入したこと、また、甲の需要を十分に満たすと誓約したこと等から、本機械部品供給契約を締結する次第である。」という一文を入れておくと、乙の機械部品の継続的な供給に不安が生じたときに、解除しやすくなるでしょう。逆に、「本契約は、乙には甲への継続的な機械部品の供給に不安はあるが、甲からの強い要請があったため、本契約を締結する次第である。」いう一文があると、甲からは、解除しにくくなるでしょう。
エ)契約締結の動機
これについても、例えば、「甲は乙の開発した機械部品が特許権を取得できるほどの優れたものであるとの説明を信じて、本契約を締結する。」と契約締結の動機を書いておくと、乙の機械部品が平凡なものであったときに、動機の錯誤を主張して契約を無効にすることが容易になります(最判平8.11.12)。そうでなくとも、契約の解除は容易になるでしょう。