遺言執行者④ 相続財産目録調整義務続き➁
1遺産課税方式
我が国の相続税の課税方式は、遺産課税方式といわれる方式です。
すなわち、相続税法11条は、相続税の課税の方法として、「相続税は、・・・相続又は遺贈により財産を取得した者の・・・財産を取得したすべての者に係る相続税の総額を計算し、当該相続税の総額を基礎として・・・財産を取得した者に係る相続税額として計算した金額により、課する。」と規定しているのです。
早い話し、1人の被相続人が残した全遺産の額を基準に相続税の総額を算出して、その額を、相続人がそれぞれ取得した財産の額で案分して納税するという方式です。
2遺産取得課税方式
遺産課税方式に対するものが、遺産取得方式といわれるものです。
これは、個々の相続人が取得した財産の額を基準に、課税する、という方式です。
3遺産課税方式と遺産取得方式の違い
例えば、Aという相続人が、相続によって、1000万円の遺産を取得したとします。この場合、遺産課税方式の下では、相続税額は、一定ではなく、遺産取得方式の場合は、相続税は一定の金額になります。
すなわち、現行の遺産課税方式の下では、いくら相続税が課されるかは、遺産の総額が分からないと計算できないのです。
全遺産が、基礎控除額の範囲内にある場合は、相続税はかかりませんが、全遺産が基礎控除額を超える場合は、相続税が課され、しかも、相続税が課せられる場合でも、遺産の総額が少ないときは低い税率が適用されるので、相続税額は少ないが、遺産の総額が大きい場合は、高い税率を適用される結果、相続税額は大きくなります。
現実に相続により1000万円の遺産を取得した相続人がいるとした場合、その人の相続税は、0円から5割に近い金額まで、ある、ということになるのです。
一方、遺産取得課税方式の下では、1000万円の遺産を取得した相続人は、全遺産の額がいくらであっても、1000万円にかかる税金は同額ということになります。
遺産を相続する人にとっては、自分が取得した金額を基準に税額が計算できる方式の方が望ましいのではないかという気がします。ですから、数年前は、相続税の改正作業の中で、遺産取得課税方式に改正すべきという意見もあったのですが、見送られ、今次の改正では、全く問題にもされていません。しかし、将来は、相続により取得した遺産の額を基準にした遺産取得課税方式に改正される可能性もあります。