遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
閑話 2 裁判官と弁護士
ここは、読者の方々に寛いでいただくところですので、言葉の解説をするものではりありません。ここでは、弁護士は、裁判官ではない、ということ言いたいので、その話をするのです。
“君は、いつ裁判官になったんか!君は弁護士だろう。弁護士だったら弁護士としての仕事をせえ!”と、怒鳴ったのは、あるボス弁。体は大きく(しかし力は弱い)、声も太くよく通る(しかし気は小さく臆病)このボス弁。ときに、イソ弁を叱るのです。叱られたイソ弁は、相当こたえるようですが、このボス弁に怒鳴られた弁護士は、大抵そのあとは、大きく成長するからすごいもんですよ。このときのボス弁とイソ弁の会話は次のとおりです。
ボス弁
なに!それ以上の権利の請求は無理だだと? 君は、事故現場を見たんか?
イソ弁
いいえ。
ボス弁
病院のカルテを見たんか?
イソ弁
いいえ。
ボス弁
担当の医師から話を聴いたんか?
イソ弁
いいえ。
ボス弁
相談者が、どんな仕事をしていたのか、職場で確認したんか?
イソ弁
いいえ。
ボス弁
類似事案について裁判例を調べたことはあるんか?
イソ弁
いいえ。
ボス弁
では、君は、何を根拠に、相談者には、それ以上の権利の請求は無理だと言うんか?
イソ弁
診断書や後遺症診断書、実況見分調書、赤い本や青い本(裁判所の損害賠償請額や過失割合を書いた書籍)を見て、判断しました。
ボス弁
君は、いつ裁判官になったんか!君は弁護士だろう。弁護士だったら弁護士としての仕事をせえ!裁判官はなあ、当時者から提出された証拠のみを見て、基準に照らし判決を書くだけでいいんじゃあ。しかし、君は裁判官ではないぞ。弁護士だぞ。そんな片々たる紙切れの1枚や2枚見たからといって、何故事故状況や相談者の過失割合が分かるじゃあ。何故、相談者の稼得能力や労働能力の喪失割合がわかるんじゃ。
事故現場へ行け。実況見分調書をもって現場へ行ったら、事故状況が目に見える。うちの事務所はなあ、それをして、実際の事故現場と調書に記載された事故現場の違いを発見して、調書では依頼人の過失が3割やむなしと思える事故で、裁判所に1割にしてもらった事件や、4割を2割にしてもらった事件もある。それから、相談者が治療を受けた病院のカルテの開示をしてもらえ。それを相談者と一緒に見るんじゃあ。必要だと思えば、主治医に会え。会って話を聴き出せ。それをした結果19歳の女性の労働能力喪失割合が、赤い本では79%とされるところを、裁判所からは92%に認定してもらった事件もある!
そこまでやればなあ。君も弁護士は裁判官とは違うことに気づくじゃろう。弁護士はなあ、裁判官になってはならないんだ。今の君の意見を相談者に言ったらどうなると思う?君の一言は、相談者にとっては敗訴判決の言い渡しと同じことになるんだぞ。相談者は裁判を受ける前に君から敗訴判決を言い渡されるということだ。君にそんな権利があると思うのか?弁護士には、相談者に敗訴判決を言い渡す権利などありはしないんだ。この事件を、相談者の利益が最大に認められるように、全力で取り組め。それとなあ、弁護士は裁判官ではないと言うことを肝に銘じておけ!
ここで、いきなり閑話休題とし、次に、「時」と「とき」の意味の違いを解説します。