遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
次の言葉は、税金の申告をした後等に使われることのある言葉です。これらの言葉の意味の違いは正確に知っておくと便利です。
1 国税通則法
国税通則法は「国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定め・・・ることを目的とする。」法律ですが、この法律の中に、「修正申告」「更正の請求」「更正」「決定」に関する規定が置かれています。
「修正」と「更正」は、いずれも、間違った課税標準(この意味は別のコラムで解説します)又は税額等を「改め直す」ことですが、それぞれ次のように使い分けられております。
2 修正申告
同法19条は「納税申告書を提出した者は・・・申告に係る課税標準等又は税額等を修正する納税申告書を税務署長に提出することができる。」と規定しております。この「修正申告」は納税義務者からする、税額が増える「なおし」の申し出です。
簡単に言えば、例えば、所得は多いのに少なく申告した人(課税標準等の修正を要する人)や、所得額の計算は間違えなかったが税額計算を間違えて少なく納税した人(税額などの修正を要する人)は、修正申告をして、すでに納めた所得税と納めるべきであった所得税の差額(それプラス過少申告加算税や延滞税も必要です。場合によっては重加算税もありですが)を納付する、というのが修正申告の意味です。
3 更正の請求
同法23条は「納税申告書を提出した者は、・・・次の各号の一に該当する場合には、・・・税務署長に対し、・・・課税標準等又は税額等・・につき更正をすべき旨の請求をすることができる。」と規定しています。
これは、修正申告とは逆に、例えば、納税申告をした人が、課税標準額や税額を実際よりも多く計算して出したために払いすぎた所得税の還付を請求するような場合のことです。
注:
法律の改正により、平成23年12月2日以後に、法定申告期限が到来する国税について、更正の請求ができる期間は、法定申告期限から原則として5年(遺留分減殺請求の結果相続する財産が減少した場合等後発的理由がある場合等により更正の請求を行うときは、それらの事実が生じた日の翌日から2か月又は4か月)になりました。平成23年12月2日より前に法定申告期限が到来する国税については、更正の請求の請求期限は従来どおり法定申告期限から1年(後発的理由による場合は、それらの事実が生じた日の翌日から2か月又は4か月)です。
なお、この文中に出た2日以後という場合の「以後」の意味や、翌日から2ヶ月という場合の「日から」の意味については別のコラムで解説します。
4 更正
同法24条は「税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、・・・課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、・・・は、課税標準等又は税額等を更正する。」と規定しています。この「更正」は、税務署長からする、税額を少なくする「更正」と、税務署長の調査によって税額を増やす「更正」があります。税務署長は、公平な税務行政をしていますので、少ない申告額の人から追徴する場合だけでなく、払いすぎた人に還付もしているのです。ですから、同じ更正であっても、納税義務者がする更正の請求の「更正」と、税務署長が職権でする「更正」は意味内容が違いますので、誤解なきよう。
4 決定
同法25条は、「税務署長は、納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかつた場合には・・・課税標準等及び税額等を決定する。」と規定しています。この「決定」は、納税義務者から税の申告書の提出がない場合に、税務署長が、課税標準等又は税額等を確定させることをいいます。
以上をまとめますと、税金の額を少なく申告した人が、間違いに気がついて、差額を納付するときの申告が修正申告で、税金を払いすぎた人(事後的に払いすぎた結果になる場合も含みます)が、差額の還付を求める請求が、更正の請求で、税務署長が、納税義務者からの申告によらないで、税法を正しく適用して税金を追徴したり還付するのが更正で、納税すべき人が申告をしないときに、税務署長が納税額を決定するのが決定なのです。