遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 制定 → 公布 → 施行 → 適用
法律は、国会での議決を経て制定されますが、それに法規範としての効力(日本国民が法的に拘束を受ける効力)を与えるためには、それが公布された上、施行される必要があります。つまり、法律は、制定→公布→施行を経て、→適用されることになるのです。
会社が作る就業規則も、まずは、制定をしなければ、利用できません。
このコラムでは、法律や政令を念頭に置いて、その制定と公布について解説します。
2 制定
制定とは「法を定める権限のある機関が所定の手続によって法としてその案文を確定する行為」をいいます(有斐閣発行の「法律用語辞典」第3版)。
すなわち、法律は、国会の議決により制定され、また、政令は、閣議の決定により制定されますが、この制定によって、法律や政令の内容が確定するのです。
むろん、現実的な効力は、その公布、施行を待たねばなりませんが、法規範の内容が確定するのは、制定の時です。なお、ここで、制定の時という言葉を書きましたが、法律上は「時」と「とき」の意味は違います。これは別のコラムで解説します。
なお、制定のことを「成立」とも言います。
3 公布
公布とは、「成立した法令を公表して一般に人が知りうる状態におくこと」(有斐閣発行の「法律用語辞典」第3版)をいいます。
法律は、国会の審議を経て制定され(成立し)ますが、それが現実に拘束力を発生させるためには、原則として、公布されることが必要です(最判昭32.12.28)。そして、法律の公布は、一般に官報等に掲載して行われることになります(同最判)。公布の時期は、一般の人がその官報を最初に閲覧、購入できた時点になります(最判昭33.10.15)。」
公布することの法的根拠
憲法7条は
「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること(以下略)」
と規定していますので、憲法改正、法律、政令及び条約の公布は、憲法に規定を置くほど重要な行為であるのです。
公布の実質的な根拠
最判昭32.12.28は、
「思うに、成文の法令が一般的に国民に対し現実にその拘束力を発動する(注:施行せられる)ためには、その法令の内容が一般国民の知りうべき状態に置かれることが前提要件とせられるのであつて、このことは、近代民主国家における法治主義の要請からいつて、まさにかくあるべきことといわなければならない。」と判示して、法律(成文法)を公布する根拠を、法治主義に求めています。
公布の方法
前記最判は、「法令の公布の方法については、明治憲法下においては明治40年勅令6号公式令により法令の公布は官報をもつてする旨が定められていたのであるが(同令12条)、右公式令は、日本国憲法施行と同時に、昭和22年5月3日廃止せられ、そしてこれに代わるべき法令公布の方法に関する一般的規定は未だ定められていない。・・・特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもつて法令の公布を行うものであることが明らかな場合でない限りは、法令の公布は従前通り、官報をもつてせられるものと解するのが相当であ」る、と判示しています。