相続相談 41 相続分の譲渡と贈与税
Q 私は遺言執行者をしている者です。遺言条項の中には、遺言者が愛人Aに甲宅地を「遺贈する」と書いた条項がありますが、甲宅地は遺言者の妻Bが占有しています。そこで、遺言執行者である私は、Bに甲宅地をまず私に引き渡すことを要求したのですが、Bに拒否されました。Bは、民法1015条の「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」という規定を示しながら、遺言執行者は相続人の代理人なのだから、相続人の意に反することはできない、というのです。私は、Bに甲宅地の引渡を請求することはできないのですか?
A できます。
民法1015条は、決して、遺言執行者を相続人の代理人としたものではありません。この規定は、遺言執行者のした法律行為の効果が相続人に帰属することを明らかにしたにすぎない規定なのです。
それよりも、民法1012条1項は「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定し、さらに民法1013条は「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」ことになっていますので、あなたは遺言執行者として、Bに対し甲宅地の引渡を請求し、Bからその引渡を受けて、Aに引き渡す義務があります。なお遺贈登記は、遺言執行者であるあなたと受遺者であるAとが共同で申請すれば可能です。