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相続相談 53 遺言の執行として特定遺贈対象財産を売却できるか?

菊池捷男

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テーマ:相続相談

Q 昨年、兄が亡くなりました。相続人は母1人でしたが、兄は、遺言書で、弟の私に、兄が乗っていた自動車を遺贈してくれました。ところが、兄が遺言書で遺言執行者に指定していたA弁護士が、この自動車を売却してしまい、私に、その売却代金から遺言執行者報酬という名目で一定額を引いた残金を支払ってくれましたが、釈然としません。そこで、A弁護士に、何故兄が私に遺贈してくれた自動車を売却したのか、と問い詰めたのですが、A弁護士は、民法1012条1項の「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」という規定で、自動車の売却ができるのだ、と答えたのですが、それでも納得が出来ません。遺言執行者がする遺言の執行とは何ですか?また、A弁護士のしたことは許されることなのですか?

A 
1遺言の執行
遺言の執行とは、遺言の内容を実現する法律行為及び事実行為のことをいいます(内田貴著・東京大学出版会民法Ⅳ親族・相続)。
あなたの場合で言えば、遺言執行者A弁護士が、あなたに自動車を引渡し、かつ、その移転登録手続をすることです。
ですから、遺言執行者が、自動車を売却することは許されません。

実は、以前、A弁護士と同じことをした弁護士がいましたが、そのために、その弁護士は家庭裁判所から遺言執行者を解任されました。
なお、一般の人は、相続法の知識が乏しく、A弁護士に自動車を売却する権限はないのに、弁護士が、遺言執行者として、それは許されると言えば、たいていの人はその言葉を信じると思われます。今回の自動車の売却ができたのも、関係者のそのような誤解も手伝ったものと思われます。以前にあった同様の事件の場合も、遺言執行者がした自動車の売却で、移転登録の申請が陸運事務所で受け付けられていたのです。
なお、あなたの場合、民法1012条1項の規定は、「A弁護士は、自動車の遺贈の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と読まれることになります。ですから、A弁護士は自動車が第三者の手にあるとき(ただし第三者が無権限で専有している場合)はそれを取り戻すこと、自動車をあなたに引き渡すこと、自動車についてあなたに所有権移転登録することはできますし、そうしなければなりませんが、自動車を処分する権利はありません。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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