交通事故 23 後遺障害① 自賠責が認めなかった後遺障害を認めた裁判例
1免責事由の意味
免責事由とは、保険者(保険会社)が、被保険者に、保険金を支払うことを拒絶できる理由をいう。
2損害賠償責任保険における免責事由
①保険契約者や記名被保険者(法定代理人を含む)の故意による事故
②記名被保険者以外の被保険者の故意による事故
【ケースで考える】
記名被保険者Aから被保険自動車の使用を許諾されたB(許諾被保険者)が、故意に交通事故を起こし、第三者(被害者)に被害を生じさせた場合、保険会社は、許諾被保険者であるBに対しては、免責事由②により、保険金の支払いを拒否できるが、記名被保険者であるAに対しては、免責されない。
③その他(戦争・地震・台風・核燃料物質・放射能・特約で定めた事由等)
3対人賠償責任保険固有の免責事由)
① 被保険者や被保険自動車の運転者、その者らの父母、配偶者(内縁を含む)、子(保険契約者群)が死傷した場合
【間違わないように1】
記名被保険者Aから被保険自動車の貸与を受けた許諾被保険者Bが、Aの父Cを死傷させた場合は、CのAに対する請求では保険金は支払ってもらえないが、CのBに対する請求では保険金は支払ってもらえる。】
【間違わないように2】
記名被保険者Aから被保険自動車の貸与を受けた許諾被保険者Bが、Aを死傷させた場合は、Aは、自分自身に対する関係でも、Bに対する関係でも、保険金の請求が出来ない。すなわち、記名被保険者A自身が被害者になった場合は、他の被保険者が損害賠償責任を負担する場合でも、免責となるのである。】
【間違わないように3】
記名被保険者Aから被保険自動車の貸与を受けた許諾被保険者Bが、Bの父Dを死傷させた場合は、Bは、Aに対する関係でも、自分自身に対する関係でも、保険金の請求が出来ない。すなわち、被保険自動車を運転している者またはその父母、配偶者、子が被害者になった場合は、他の被保険者が損害賠償責任を負担する場合でも、保険金の請求は出来ない(免責となる)のである。】
【これを免責事由にしている理由】
対人賠償責任保険は、第三者に対する保険契約者群の賠償支払いリスクを無くする目的の保険。身内の者(保険契約者群)に対する損害賠償は、通常しないのが普通。その責任まで担保するのはモラル・リスクがあるため。
なお、無保険車傷害保険の場合は、これは免責事由にはなっていない。
②被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人の人身事故(同僚災害)
【これを免責事由にした理由】
労災保険が適用になることから。
なお、「記名被保険者による同僚災害担保特約」がついている保険の場合は、保険金が支払われる。
4人身傷害補償保険における免責事由
①極めて重大な過失
損害賠償責任保険では、被保険者の「故意」が免責事由になっていて「重大な過失」は免責事由にはなっていない。しかし人身傷害補償保険では、被保険者の「極めて重大な過失」も免責事由になっている。故意の立証が難しいことが原因である。最判昭32.7.9は、失火責任法でいう「重大な過失」を「ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」としている。
②他の自動車に搭乗中の場合の免責事由
人身傷害補償保険は、被保険自動車のみでなく、他の自動車に搭乗中の事故につても適用を受けるが、その場合は、次の事故が免責事由になる。
ア 被保険者が、二輪自動車および原動機付自転車に搭乗中に生じた事故
イ 被保険者が、記名被保険者及びその家族(範囲は約款による)が所有又は主として使用する自動車に搭乗中に生じた事故
ウ 被保険者が、被保険者の使用者の業務のために、被保険自動車以外の被保険者所有の自動車に搭乗中の事故
エ 被保険者が、競技等危険な利用をするために搭乗中の事故