交通事故 23 後遺障害① 自賠責が認めなかった後遺障害を認めた裁判例
1 増額理由
次のような場合は、慰謝料は増額される。
⑴ 残された遺族の扶養を特に考慮する必要がある場合
・兼業主婦49歳が死亡し、17歳の娘が残された事案(事故日は平15.12.5)で、本人分2600万円、娘固有の分400万円、合計3000万円を認めた東京地判平15.12.5
・38歳の若さで死亡。残された遺族は妻と2人の子という事案(事故日は平16.8.21)で、本人分2800万円、妻固有の分200万円、子2人の固有の慰謝料各100万円、合計3200万円を認めた札幌地判平18.8.11
・29歳の男性が平16.4.11事故死。本人分2800万円、妻と長女に固有の慰謝料として各200万円、合計3200万円を認めた千葉地松戸支判平19.12.26等がある。
⑵ 扶養家族が多い場合
・34歳の男性が平17.7.11事故死。本人分3000万円、妻200万円、父母各100万円合計3400万円を認めた東京地判平20.8.26等がある。
基準額は2800万円であるから、これらの裁判例では、基準額より高く認定されている。
⑶ 加害者の悪性が強い場合も慰謝料は増額する。
飲酒運転、危険運転、不合理な弁解をして、責任逃れをする加害者などの場合である。
・東京地判平15.7.24は、酒酔い運転をし、高速道路上で、渋滞のため同方向に減速して進んでいた被害車両の後部に衝突し被害車両を炎上させ、被害車両後部に乗車していた子供2人を死亡させた事故で、加害者に、子1人につき3400万円の慰謝料(本人分2600万円、両親の分各400万円合計3400万円。子供の慰謝料の赤い本による基準額は1人につき2000万円から2200万円なので、かなりの増額)支払を命じた。この判決が高額の慰謝料を認めたのは、加害者が飲酒酩酊の上蛇行運転をし、被害車両に追突炎上させ、幼い子を両親の目の前で焼け死なせていること等が考量されている。