交通事故 21 逸失利益⑫ 定期金賠償は認められるか?
1 問題
年金や恩給を受給していた被害者が、交通事故で死亡した場合、当然、その後は、年金や恩給は受給できなくなる。それを逸失利益として認められるか?
2 逸失利益として認められるもの
⑴ 普通恩給
最判昭和59.10.9は、「公務員であった者が支給を受ける普通恩給は、当該恩給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるから他人の不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得するものと解するのが相当である。」と判示した。
⑵ 地方公務員等共済組合法に基づく退職共済年金(最判平5.3.24)
⑶ 国民年金法に基づく老齢年金(最判平5.9.21)
⑷ 国家公務員法に基づく退職共済年金(最判昭50.10.24)
⑸ 国民年金法に基づく障害基礎年金(最判平11.10.22)
⑹ 厚生年金法に基づく障害厚生年金(最判平11.10.22)
なお、平11.10.22は、国民年金法に基づく障害基礎年金も厚生年金保険法に基づく障害厚生年金も、原則として、保険料を納付している被保険者が所定の障害等級に該当する障害の状態になったときに支給されるものであって、程度の差はあるものの、いずれも保険料が拠出されたことに基づく給付としての性格を有している。したがって、障害年金を受給していた者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、障害年金の受給権者が生存していれば受給することができたと認められる障害年金の現在額を同人の損害として、その賠償を求めることができるものと解するのが相当である、と判示した。
3 逸失利益として認められる場合の期間
最判平11.10.22は、平均余命までと判示。
4 逸失利益として認められないもの
⑴ 遺族基礎年金、遺族厚生年金、遺族共済年金
⑵ 国民年金法に基づく子の加給分及び厚生年金保険法に基づく配偶者の加給分
最判平11.10.22は、これら(⑴と⑵)は、いずれも受給権者によって生計を維持している者がある場合にその生活保障のために基本となる障害年金に加算されるものであって、受給権者と一定の関係がある者の存否により支給の有無が決まるという意味において、拠出された保険料とのけん連関係があるものとはいえず、社会保障的性格の強い給付である。加えて、右各加給分については、国民年金法及び厚生年金保険法の規定上、子の婚姻、養子縁組、配偶者の離婚など、本人の意思により決定し得る事由により加算の終了することが予定されていて、基本となる障害年金自体と同じ程度にその存続が確実なものということもできない。これらの点にかんがみると、右各加給分については、年金としての逸失利益性を認めるのは相当でないというべきである、と判示
⑶ 軍人恩給としての扶助料及び戦没者等の妻に対する特別給付金(最判12.11.14)