交通事故 21 逸失利益⑫ 定期金賠償は認められるか?
1 問題
交通事故により後遺障害が発生した後、別の原因で死亡した場合、その時点で、逸失利益は打ち切られるか?
例えば、30歳の被害者が、最初の事故で、後遺障害が7級、労働能力喪失率が56%とされると、67歳までの37年間、年収の56%の逸失利益が発生する。この計算は、被害者が67歳まで生きるとの前提で計算された金額である。
その被害者が、その1年後、交通事故で死亡したときは、計算の前提を欠くことになるので、逸失利益の計算がやりなおされるのか?という問題が考えられる。
2 回答
打ち切られない。
それは、被害者が、1年後の交通事故で死亡したときは、最初の交通事故によって無くした56%の逸失利益が、復活するものではなく、残り44%の労働能力が喪失するだけのことだからである。むろん、後の交通事故の加害者は、この44%の逸失利益を賠償するだけでよい。
3 判例
最判平8.4.25は、交通事故時に既に死期が予測されていた特殊の場合を除き、被害者の損害は、交通事故時に確定しているとし、その後の被害者の死亡は、逸失利益に影響を与えないと判示している。
4 生活費は控除しない。
最判平8.5.31は、後遺症による逸失利益が確定した被害者が、その後死亡したとしても、死亡後労働能力喪失期間末日までの生活費の控除はしなくてもよい旨判示している。