交通事故 23 後遺障害① 自賠責が認めなかった後遺障害を認めた裁判例
1 基礎年収は、将来の逸失利益算定の基礎になる年収
これは、原則として、事故前年の実年収が基本になる。
しかし、その年収が、労働能力喪失期間中変動しないわけではなく、昇給が高い蓋然性をもって認められる場合は、昇給分が加算されることになる。最判昭43.8.27は、「死亡当時、安定した収入を得ていた被害者において、生存していたならば将来昇給等による収入の増加を得たであろうことが、証拠に基づいて相当の確かさをもって推定できる場合には、右昇給等の回数、金額等を予測し得る範囲で控え目に見積もって、これを基礎として将来の得べかりし利益の収入額を算出することも許される」と判示しているとおりである。
2 若年者の場合
⑴ 賃金センサスの平均賃金を利用
若年者の場合は一般に年収が低いので、事故前年の実年収によらず、賃金センサスの全年齢平均の基準賃金による場合が多い。
例えば、後遺症1級・症状固定時28歳の男性で、事故前の年収は350万円であったが、逸失利益算定の基礎年収は、賃金センサス男性大卒年齢平均の671万2600円であるとした東京地判平15.10.27がある。
学生や生徒の場合も賃金センサスの平均賃金が基礎年収になる。
⑵ 将来とも年収が平均賃金より少ない被害者の場合
もともとの年収が少なく、逸失利益喪失期間中、賃金センサスの平均賃金を得ることが期待できない被害者の場合は、賃金センサスの平均賃金を基礎年収とはされず、その一定割合とされる場合がある。
例えば、後遺症12級・症状固定時44歳の男性が、派遣社員で実年収が250万円のケースでは、基礎年収を賃金センサス男性学歴計年齢平均の全額ではなくその7割となる約400万円とした東京地判平16.7.5などがある。