交通事故 66 ヘルニア
1 意味
逸失利益とは、交通事故によって、被害者が死亡するか、後遺症(後遺障害)が生じることによって、労働能力の全部又は一部が喪失したときに、死亡した時以後又は後遺症が生じた時以後に本来なら得られたであろう利益(これを「得べかりし利益」という)の全部又は一部を失うことになるが、その得べかりし利益の喪失をいう。
すなわち、
⑴ 逸失利益は、死亡したとき又は後遺症が生じ、労働能力の全部又は一部を喪失したことが前提となる。
⑵ これによる、得べかりし利益の全部又は一部の喪失が、逸失利益である。
2 逸失利益の算定式
計算方法は、
⑴ 死亡による場合は、
基礎年収×労働喪失期間に対応するライプニッツ係数-生活費になる。
⑵ 後遺症による場合は、
基礎年収×労働能力喪失率×労働喪失期間に対応するライプニッツ係数になる。
3 労働喪失期間に対応するライプニッツ係数の意味
⑴ 中間利息の控除
逸失利益は、将来の減収分を症状固定時に一時金で支払うものであるために、中間利息を控除する必要がある。その方式は現在ライプニッツ方式に統一されている。また、中間利息の割合は、民法の法定利率である年5%とされている。それを係数にしたのがライプニッツ係数である。
なお、中間利息控除の基準時は症状固定時だが、事故時とする裁判例もある。
4 生活費控除
被害者が死亡したときの逸失利益は、相続人が相続するが、被害者が生きていたときに支出する生活費は、本来相続するものではないので、これが控除されるのである。
生活費は、基準年収の一定割合で表示され、死亡事故の場合のみ、控除される。
後遺症の場合、逸失利益の計算上、生活費は控除しない。被害者が植物人間になった場合でも生活費は控除しないとする裁判例(東地判平10.3.19・大阪地判平13.9.10等)がある。