交通事故 23 後遺障害① 自賠責が認めなかった後遺障害を認めた裁判例
第1 主婦
1 専業主婦
専業主婦であっても、交通事故の被害に遭えば、当然に、休業損害金は認めらる(最判昭50.7.8)。
その基準は、①賃金センサスの女子労働者全体の平均値とする裁判例、②被害者の年齢に対応する労働者の平均値とする裁判例があるが、最近は①が多いとされている。因みに、①の賃金センサス平成22年女子労働者全体の平均値(学歴計)は345万9400円であるので、1日9477円になる。自賠責保険による専業主婦の休業損害金は1日あたり5700円であるので3777円もの差が出る。
なお、本コラムで解説するものはすべて裁判基準である。任意保険会社の提示する金額は、一般に裁判基準よりは低額である。
2 兼業主婦
兼業主婦の場合は、収入が賃金センサス金額より少ないときは賃金センサス金額、多いときはその多い方の金額が基準になる、とされており、働いて得た収入と賃金センサスの金額が機械的に合算されるのではない。
ただ、夫の事業を手伝う他、お茶や着物の着付けの指導料を得ていた主婦について、前記①の「賃金センサスの女子労働者全体の平均値」ではなく、それよりも金額が多くなる②の「被害者の年齢に対応する労働者の平均値」を基準に休業損害金を算出した裁判例(東地判平15.1.28)がある上、パート収入が月4万6000円の主婦について、それを12倍したものと賃金センサス金額の合計額を基礎に、その主婦の休業損害金を算出したもの(神戸地判平12.9.26)があり、この裁判例は、パート収入と賃金センサス金額を合算したものが休業損害金の基礎とされているので、兼業主婦の場合、専業主婦に比べ、より多額の休業損害金が認められる余地は大きく、立証次第では、兼業部分の収入に賃金センサス金額を加えたものを基礎とされる可能性はある。
3 家事を他人に頼んで謝礼を支払った場合
原則として、その代替労務費は休業損害金として認められる。ただし、代替労務費とパート収入を会わせたものが休業損害金の基礎とされることはない。
第2 無職者
1 失業者
⑴ 原則として、休業損害金は認められない。
⑵ 就職先が決まっていた場合は、就職予定日以後について休業損害金が認められる。
⑶ 就職先は決まっていないが、労働能力と労働意欲があり、就職の蓋然性があるものは休業損害金が認められる。この場合、賃金センサスの平均賃金又は若干それより少ない金額になる場合が多い。就職活動中の女性に、就職の蓋然性が高いとして賃金センサス女子全年齢の基準の8割を認めた裁判例(東京地判平7.7.18)がある。
2 学生・生徒
原則として認められないが、アルバイト収入があれば認められる。
就職遅れによる休業損害金は、当然、認められる。